§分子生物学
☆佐野 圭二
〓主題と目標〓
生命の情報はATGCの4文字で書かれた遺伝子の配列に依存する。この講義では転写、翻訳、複製などの機構の基礎を分子レベルで理解できることを目標とする。まず研究が進んでいる原核細胞での機構を理解し、さらにより複雑な真核細胞での発現やその調節機構の基本的なモデルを理解して欲しい。次に遺伝子発現の調節機構の代表的なモデルについて学習する。また,近年必須の技術となってきた遺伝子操作の基本的な原理についても学習する。
生物全てに共通の機構と、各生物に特有の機構を明確に区別して理解して欲しい。
〓授業計画〓
第1・2回
§0.生命進化の概略:原核生物の誕生、真核生物、多細胞生物への進化の概略
§1.遺伝学の歴史:メンデル、モルガン、ビードルの発見したこと。
§2.遺伝子=DNAの証拠:肺炎球菌の形質転換、バクテリオファージ感染
§3.DNAの構造:塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドとその方向性、RNAの成分、逆平行右巻き二重ラセン構造、相補塩基対形成と水素結合
§4.遺伝子と生物学的情報:遺伝子の配置、セントラルドグマ、多重遺伝子族、遺伝子発現の概略
第3回 RNAの転写、スプライシング
§5.転写:RNAポリメラーゼの役割、プロモ一タ一配列と転写開始、転写終結機構
§6・7.RNAの種類:rRNA、tRNA、mRNAの構造と機能、真核mRNAの修飾:cap構造、ポリAテイル、エクソンとイントロン、スプライシング(GT-AT則)、RNAエディティング、リボザイム
第4・5回
§8.遺伝暗号:タンパクの構造(1次−4次構造)の概略、遺伝暗号の解読、遺伝暗号の普遍性と例外、遺伝暗号の宿重
§9.翻訳:tRNAのアミノアシル化、コドンの認識と揺らぎ、SD配列(rbs)、翻訳の開始、ぺプチド鎖の伸長、翻訳終結、原核細胞における転写と翻訳の共役
追加:真核細胞オルガネラ及び細胞外へのタンパク配達機構
第6・7回
§10.原核遺伝子の発現調節
lacオペロンの調節(リプレッサー、インデューサー、オペレー夕一部位、cAMP、CAPタンパク)、トリプトファンオペロン(コリプレッサー)
§lO-2.真核生物の遣伝子発現調節:メタロチオネイン遺伝子とMRE(メタル応答エレメント)&GRE、トランスフェリン受容体とフェリチンmRNAの安定性とIRF、IL-1とNFkBによる抗体遺伝子転写活性化機構、エピネフリンとCREBによる転写活性化、アンテナペディア変異と発生、ホメオボックス
第8回 DNAの複製、変異と修復
§11.DNAの複製
半保存的複製機構による子孫への正確な情報伝達、DNAポリメラーゼTの発見と反応の特徴(鋳型依存性、合成方向、プライマーの必要性)、岡崎断片によるラギング鏡の不連続合成、誤りの校正、RNAプライマーゼ、PolV,PolT,DNAリガーゼの役割
§12.遺伝子の変異と復帰、修復、サプレッション、複製時のエラーの校正(娘鏡が校正される理由)
第9・10回 ゲノム、細胞周期
§13・14.ウイルスと細菌のゲノム
§15.真核生物のゲノム:ヌクレオソーム、動原体、テロメア、細胞周期とチェックポイント(CDK、MPF)
第11・12回 遺伝子操作
§20.21.遺伝子操作
遺伝子クローニング、プラスミドベクター、制限酵素、挿入不活化
真核遺伝子cDNAのクローニング、塩基配列決定法、PCR法(ポリメラーゼチェインリアクション)の原理と応用