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2017年10月
2018年4月、心理学部誕生!
「社会に生きる心理学」を

知の“今”に挑む研究者たち2018年4月、心理学部誕生!「社会に生きる心理学」を 道城 裕貴 Yuki Dojo 人文学部

自閉スペクトラム症など発達障害がある子ども達のサポートを実践的に研究

中学生の時に『自閉症だった私へ』(新潮文庫)という本を読んだことがきっかけで心理学に興味を持ちました。大学では発達心理学を学び、発達障害がある子ども達の支援・サポートを専門に研究してきました。大学院修士課程の頃から、発達障害のある子どもが社会的に自立できるようにするために治療と教育を行う「療育」について実践的に研究。家庭内療育をはじめ、クリニックでも療育の経験を積みました。
ある時、療育していた自閉スペクトラム症の子どものご家族から「この子が小学校に入学したら、どんなことに困りますか?」という相談を受けました。自閉スペクトラム症の子どもは、初めてのことや予期せぬことに対応するのが苦手という特性があります。そこで提案したのが、入学前の「学校ごっこ」です。家庭にいながらにして学校での生活をシミュレーションできるプログラムをつくり、実践してもらいました。このように、発達障害があるお子さん本人とご家族を実践的にサポートするのが、私の研究の一つの柱になっています。

その後、サポートの範囲は学校へも広がっていきました。ここ数年は、神戸市、明石市などから依頼を受けて学校を訪問し、子どもたちと先生方を専門家の立場からサポートする「学校コンサルテーション」を行っています。
通常学級に所属する子どものうち発達障害の可能性がある小・中学生は、6.5%にも上ります(2012年度文部科学省調査)。1クラス40人のうち2~3人という比率ですから、決して少なくありません。2007年に、障害と診断されているいないに関わらず、学習や学校生活に配慮が必要な子どもたち一人ひとりを支援するという国の方針が打ち出されました。その結果、私たち発達心理学の専門家や特別支援教育の専門家、医師、臨床心理士、学校心理士など、それぞれが専門知識と経験を活かして学校や先生方に助言や解決策を提案する学校コンサルテーションが盛んに行われるようになりました。

私の場合は、「学級になじめない、教室から飛び出してしまう、友だち同士のトラブルが絶えないといった子どもへの対応」、「学級全体の指導と一人ひとりのサポートとの両立」などの相談をよく受けます。学校で子どもたちの様子を実際に見て先生方の悩みを聞き、一緒に支援や対応の仕方を考え、時にはご家族の相談に応じて家庭でのサポートについてアドバイスすることもあります。心がけていることは、明日からでもすぐにできる支援を提案すること。大がかりなことではなく今あることを活かしてできるアイデア、クラス全員の指導をしながらでも実施しやすいプランなど、状況に応じた現実的な提案をするようにしています。

地域の子育てを支援する「子育てサロン まなびー」

人文学部人間心理学科(2018年心理学部に改組)では、発達心理学領域の実習を兼ねて、大学キャンパス内で近隣の親子連れを対象とした「子育てサロン まなびー」を運営しています。就学前の子どもたちにプレイルームを開放して遊び場として使ってもらうとともに、学生に幼い子どもたちとの触れ合いを通して子どもの発達を体験的に学んでもらおうという目的で、10年以上前に前身となる活動をスタートしました。2011年からは週1回の定期的なプログラムに、2014年からは神戸市指定の事業として週3日の実施へと充実、発展させてきました。

「まなびー」では、保育士などが常駐して見守りながらプレイルームを開放する通常の活動のほか、「学生とあそぼう」「アートであそぼう」「親子リトミック」「遠足」などの特別プログラムを実施しています。中でも「学生とあそぼう」は、学部(発達心理学領域)3年次生のゼミ、「アートであそぼう」は大学院生(人間文化学研究科心理学専攻)の実習と連動させ、学生自身がイベントの企画から運営まで行います。事前準備の時間を設け、かなりの知恵と労力をかけて子どもたちが喜ぶ遊びの世界をつくり上げます。多彩なプログラムを運営するとともに、体験を学びとして蓄積する事前事後指導の時間も設けています。学生にとっては、子どもたちや保護者と触れ合いながらそれまで学んできた発達についての知識を深め、多くの気づきを得ることができる貴重な成長の機会となっています。子育て中のお母さん方の交流、情報交換の場としても好評で、今後もさらに充実を図っていきたいと思います。

国家資格「公認心理師」に対応する心理学部が2018年に誕生

本学では、2018年4月に従来の人文学部人間心理学科を改組し、新たに心理学部として開設します。従来からの教育理念であった「社会に生きる心理学」を、より専門性を高めてブラッシュアップした教育内容によって実現したいと考えています。

一番の目玉は、心理職初の国家資格「公認心理師」の資格取得に完全対応したカリキュラムを用意した学部であるということです。公認心理師は、医療、福祉、教育、司法、産業の5領域で活躍する心理専門職を目指したもので、これまで臨床心理士、臨床発達心理士、学校心理士といった民間資格を持って活躍してきた心理職の活躍の場がさらに広がることが期待されています。受験資格を得るためには、学部に加えて大学院修士課程を修了する必要があり、本学では2019年度を目指して公認心理師の資格取得に対応した大学院教育の実施準備を進めています。

新学部のカリキュラムではこれまで以上に実習を重視。学外講師を招く学内での実習から積極的に学外に出て行って体験する実習へと段階的に社会との触れ合いを広げ、幅広い領域で心理職がどのように活躍しているのか、支援する方々がどのような状況にあり何が課題なのかを、実際に見て感じながら学んでいきます。幅広い「現場」に関わりながら心理学の面白さを体験し、公認心理師を目標にする人も、そうでない人も、自分の可能性を広げることのできる学部を目指しています。療育や学校コンサルテーションなどの分野で心理職として社会と密接に関わってきた私自身の経験を、学生の実践的な学びに活かしたいと考えています。

Focus on lab ―研究室レポート―

「子育てサロン まなびー」では、人文学部人間心理学科の発達心理学領域の3ゼミが競い合って、子どもたちを夢中にさせる楽しいプログラムを企画しています。ペットボトルなどを使った手作り楽器、映画の世界を再現した身体を使った遊び、じゃがいもやさつまいも堀りの遠足など、企画内容はもちろん、現場で子どもたちを楽しませるための演出や運営にも知恵を絞ります。「子どもたちと触れ合う機会の少ない今の学生にとって『幼い子がこんなこともできるなんて!』と、新鮮な発見があるようです。そんな学生たちの姿に、主体的な学びから得られる成果の大きさを実感しています」(道城准教授)。

プロフィール

2001年 関西学院大学 文学部 心理学科 卒業
2006年 関西学院大学大学院 文学研究科 博士課程 後期課程 心理学専攻 単位取得満期退学
2007年 博士(心理学)取得(関西学院大学)
2007年~2008年 関西学院大学大学院 文学研究科 博士研究員
2008年~2010年 上越教育大学大学院 学校教育研究科 臨床・健康教育学系 特別支援教育コース 助教
2010年~ 神戸学院大学 人文学部 人間心理学科 講師
2015年~ 神戸学院大学 人文学部 人間心理学科 准教授(現在に至る)
※2018年4月より心理学部心理学科所属

主な研究課題

  • 発達障害や特別な教育的ニーズがある子どもたちへの療育
  • 学校現場における行動コンサルテーション
  • 通常学級に対する学級支援及びユニバーサルデザイン
  • 特別支援教育支援員の行動的アセスメント
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