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2016年9月
変幻自在のトレンドを丹念に追いかけ
消費者という名の「謎」を解明したい

神戸学院大学のSocial in ~地域社会とともに~ 変幻自在のトレンドを丹念に追いかけ消費者という名の「謎」を解明したい 辻 幸恵 経営学部 教授

ゆるキャラや雑貨をテーマに
消費者心理や行動を解明する


私の専門分野は、マーケティングです。マーケティングは、1960年代にアメリカから入ってきた学問で、当時は製品、値段、広告、物流の4つが基本の研究対象でした。高度経済成長のさなかにあった日本では、いかに製品の機能を高め品質の良いものをつくるかに知恵を絞り、実際に良い製品はよく売れました。家電メーカーがつくる冷蔵庫や洗濯機などいわゆる白物家電が良い例です。ところが、1980年代に入ると多様化の時代とも称される、消費者がさまざまな価値観を持つ時代が到来しました。品質さえ良ければいいわけでもないし、安ければ売れるのでもない。一体、何が売れるのかという問いの答えの一つが、付加価値です。私は、この付加価値をどのようにマーケティングに活かすかという研究を手がけ、とくにブランドマーケティング、被服マーケティングに軸足を置いてきました。

数年前から研究対象として注目しているのが、キャラクターです。例えば、ゆるキャラが地域に与える影響も研究テーマの一つです。2011年にゆるキャラグランプリ王者になった熊本県のマスコットキャラクター「くまモン」は、「2011年11月から2013年10月までの2年間に1244億円もの経済波及効果をもたらした。」と日本銀行熊本支店は試算しました。とてつもない金額です。ゆるキャラは、それを導入したお土産や地元の特産品の売れ行きを高めたというだけでなく、観光客を集める広告塔にもなりました。「ひこにゃん」は彦根城を全国にアピールしましたし、2015年のグランプリを獲った浜松市の「出世大名家康くん」が着ている袴の柄はピアノの鍵盤になっていて、地場産業の楽器製造をPRしています。産業や地域を広告し経済効果を生み出すゆるキャラは、マーケティング分野で非常に重要な存在なのです。

マーケティングにおいては、売る側の工夫ばかりではなく買う側にも目を向ける必要があります。私が着目しているのは、「消費者の商品選択の基準」です。研究対象は、今ブームになっている雑貨・ハンドメイド。雑貨というのは面白い対象で、販売されている場所が百貨店から神社の露店まで実に多様です。また値段の幅も大きく、百円均一でも売っているかと思えば何万円もする輸入雑貨もあります。安くても気に入らないものは買わないし、どんなに流行っても興味がないなら手を出さない。そんな消費者心理や行動を研究するには、うってつけの対象といっていいでしょう。

調査や自治体・企業とのコラボなど
体験する学びで成長する学生たち


マーケティングは、現場で事象に触れ、実際にやってみて学ぶことの多い学問です。ゼミ活動でも、フィールドワークを中心に学生たちが体験的に学べる場を数多く設けており、常にいくつものプロジェクトが動いています。

例えば、神戸市中央区が作成した防災アプリ「かもめんnavi」へのコンテンツ提供です。災害時に避難所と避難経路をナビしてくれるアプリを、若い世代へ普及させるにはどうしたらいいかという課題に対して、ゼミで提案したのがお店紹介のコンテンツでした。タイトルは「この店、行っとコウベ」。若者の視点で選んだ既存の雑誌などであまり紹介されていないお店の情報を、学生自身が取材・執筆して掲載しています。お店にはアプリがダウンロードできるバーコード付きのカードも置いてもらうことになりましたが、それも学生の提案です。

企業とのコラボでは、お菓子メーカーと一緒に「神戸開港150周年」にちなんだ商品開発に取り組んでいます。最初はポートタワーをモチーフにするなどお土産物のようなアイデアを出していた学生たちですが、途中で、それでは全国のスーパーやコンビニに並ぶお菓子としてあまり魅力がないということに気づいてくれました。150ぐらいのアイデアの中から2案に絞り込まれ、企業のご判断を待っているところです。

地域の方々との触れ合いの場にも、できるだけ学生を連れていきます。2015年の夏休みには、グランフロント大阪で小学生と保護者を対象とした「売れるモノづくりに挑戦!」と題したワークショップを実施。世の中の商品は、「誰が」、「いつ」、「いくつ」買うのか、それを決めているのは誰なのか、子どもたちに考えてもらい、マーケティングの基礎を学んだ後、実践編としてエポキシ樹脂を使った小物入れのデコレーションを作り、マーケティング戦略に基づいて値付けやPOPを制作するという内容です。学生たちは、デコレーションのアドバイスをしたり、原価や人件費などの知識を教えたりしながら子どもたちをサポートしました。知識のない子どもたちにどんな言葉を使えば伝わるのか、身をもって学びました。

身近な視点で商品をつくりモノを売る
実践から理解する現代の経営

私のゼミでは、何か行動することで評価されます。失敗しても、行動を起こせば評価します。また、チームが成功しても、一生懸命取り組んでいなかったメンバーの評価は低くなります。一緒に取り組むうちに仲良くなり、チーム力がついてくることも大きな成果だと思います。就職活動においても、こうしてゼミで身につける能力が役に立つはずです。

その意味でも、学生ならではの視点を武器にモノづくりに参画できるような取り組みを、今後ますますバージョンアップさせていく予定です。現在、アクセサリー作家さんとコラボした、辻ゼミプロデュースの商品づくりが始動しています。クリスマス商戦までに商品を完成させ、神戸で販売することを目標にしています。

このようなコラボ商品開発プロジェクトを増やすのに加え、販売することも経験させたい。 売ってみると、モノの動きがつかめ、さらには売れるにはどうしたらいいのか、と視点が広がっていきます。自分の身近なところから挑戦するうち、いつのまにかマーケティングや経営を実践している。そんな学びの体験をこれからもサポートしていきたいと思っています。

Focus on lab ―研究室レポート―

辻ゼミ4回生税関見学

辻ゼミでは毎年6月、日本繊維製品消費科学会という学会で行われる学生対象の発表会に3年次生が参加しています。今年は「現代の女子会市場調査」、「ライブグッズに対する若者の金銭感覚」などをテーマに発表しました。自分たちで調べたことを大きな舞台で発表することは、やりがいや達成感、自信につながるとのこと。また、ポートアイランドキャンパスにあるブックカフェ「ハオン」では、2016年度から学生セレクト本のコーナーが設置されていますが、現在、辻ゼミの2年次生と3年次生の学生がそれぞれのコーナーをつくって売り上げを競っています。実践でマーケティングを学べるのが辻ゼミの魅力です。

プロフィール

1984年 武庫川女子大学 文学部教育学科 初等教育専攻 卒業(文学士)
1986年~1992年 森本税務会計事務所 勤務
1992年 神戸大学大学院 経営学研究科 博士前期課程 商学専攻修了(修士商学第97号)
1996年 武庫川女子大学大学院 家政学研究科 博士後期課程 被服学専攻修了(博士家政学第13号)博士(家政学)
1998年~ 京都学園大学 経営学部 専任講師
2001年~ 京都学園大学 経営学部 助教授
2003年~ 追手門学院大学 経営学部 助教授
2006年~ 追手門学院大学 経営学部 教授
2011年~ 神戸国際大学 経済学部 教授
2015年~ 神戸学院大学 経営学部 教授

主な研究課題

  • ゆるキャラが地域に与える影響についての研究
  • 消費者の商品選択の基準を解明する研究
  • 価値観の差による購買行動・商品選択の相違についての研究
  • 雑貨に対する感性の相違と購買行動との関係についての研究
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