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2015年1月
認知症高齢者の生活向上を目指す
支援モデル事業に参画

神戸学院大学のSocial in 〜地域社会とともに〜 認知症高齢者の生活向上を目指す支援モデル事業に参画  前田 潔 総合リハビリテーション学部 教授

神戸市と連携し、
多職種からなる支援チームで
認知症患者と介護家族を支援

前田 潔 総合リハビリテーション学部 教授

神戸学院大学総合リハビリテーション学部は、2013年に神戸市と連携協定を結び、厚生労働省が掲げる「認知症施策推進5カ年計画」の一環である「認知症初期集中支援モデル事業」に参画しています。この事業は、これまでのように認知症が進み問題が起こってからの支援ではなく、問題を未然に防ぐための早期発見・早期対応・地域連携で認知症の人を支えることを目的としています。認知症になっても本人の意思が尊重され、可能な限り住み慣れた地域で暮らし続けられる社会づくりを目指し、神戸市の他、全国14カ所の自治体がこの事業に取り組んでいます。

支援の鍵となるのは支援チームが多職種で構成されていること、自宅訪問を行うアウトリーチの2点です。支援チームは専門医・看護師・作業療法士、社会福祉士など5〜6の職種を含む7〜8人で構成されていますが、チーム内に認知症専門医が含まれていることは大きなメリットといえます。医療と介護の間には深い溝があると長く言われてきましたので、こうした支援チームに専門医が参加する意義は大きいと考えています。認知症専門医がチームにいることで、他の職種は、困ったときには専門医の援助が得られると意を強くします。

実際の支援はチーム内の2〜3人が認知症の疑いのある方の自宅を訪問して話を聞き、身体状況などのアセスメントをチームへ持ち帰ることから始まります。認知症の疑いのある方には受診を拒む方が少なからずいますので、自宅を訪問することで認知症患者の早期発見・早期対応につながります。次の段階では持ち帰った情報を元にチーム員会議を開きます。多職種で構成されたチーム員それぞれの専門性を活かし、視点の異なる知恵を出し合うことで質の高い支援・サービスを提供できると考えられます。神戸市では医療と介護が連携し、専門医療機関への早い受診や介護保険サービスを利用するための道筋が確保されていますが、地域の中の医療資源を有効に使う医療連携も課題となっています。患者が信頼を寄せているかかりつけ医から専門医への受診を勧めると、それまで受診を嫌がっていた患者も素直に受診するということもよくあります。診療後の薬を出したり、かかりつけ医と認知症専門医が連携することで患者の負担や孤立を防ぐことができると考えています。

支援事業がスタートして1年、これまでに約100例、週に2〜3例程を扱ってきました。先日行われた報告会では患者家族からの感謝の声の他、ケアの先頭に立つケアマネージャーからは「専門医を含む多職種のチーム員の存在が大変心強い」という意見が聞かれました。認知症支援は認知症の人だけでなく、家族や介護する側への心理的なサポートも大切です。積極的に介入・支援していくことが患者家族や介護者への支援にもつながると考えています。

他職種に負けない向上心を持ち、
患者の心理に寄り添える作業療法士・理学療法士に

前田 潔 総合リハビリテーション学部 教授

本学総合リハビリテーション学部は、作業療法士(OT)、理学療法士(PT)、社会福祉士(SW)、精神保健福祉士(PSW)などを育成しており、理学療法学科、作業療法学科では、教員の2/3を作業療法士・理学療法士が占めます。残りの1/3は私のような医師で内科学、整形外科学、精神医学などの専門基礎教育科目を教えています。

私が担当する精神医学では精神科医として臨床経験で得た具体的な症例を語り、精神疾患への理解が深められるような講義をしています。作業療法士・理学療法士は患者に触れ合う機会の多い職種で特に身体・精神両方の機能回復を担う作業療法士にとって精神医学はとても重要な科目といえます。患者心理を理解し、患者の気持ちに寄り添える医療職を育成することで、より良い医療を提供していきたいと考えています。

医療や福祉の現場を志す本学の学生たちは国家資格取得を目指して皆真剣に学んでいます。医療や福祉の現場は大きなやりがいがある反面、厳しさが伴いますから、社会に出た後の困難にどう立ち向かうかを示し、勇気づけるのも教員の仕事の一つだと感じています。また、医療現場で共に働く医師・看護師・薬剤師たちは現場で働き始めた後も職場で定期的に勉強会や研究会を開いて、一生勉強を続けていきます。学生たちには、職場で接する他の医療職と、対等にプライドを持って協働できるよう、常に探究心を忘れず、自らの能力を高めてほしいと願っています。

誰もが誇りを持って
終末期を迎えられる社会を目指して

前田 潔 総合リハビリテーション学部 教授

私が医師になった当初は介護保険も施行されておらず、高齢者や認知症の方は十分なケアを受けられないまま亡くなっていきました。悲惨な終末期を迎える方は少なくありませんでした。そうした方々を見て「人間らしく誇りのある終末期を迎えるにはどうしたらいいのか」と考えたことが老年精神医学を研究するきっかけのひとつでした。

医学部時代は遺伝子研究などに力を注いできましたが、本学に就任してからは認知症専門医としてより直接的な活動をし、認知症高齢者の生活の質を少しでも向上させたいと考えています。認知症は誰もがなりうるもので決して特別な病気ではありません。ガン患者への告知がほぼ100%行われているように、認知症の告知もいずれ行われるようになっていくと思います。本人が望む余生の過ごし方を聞き、できるだけそれを実現させてあげるのは周囲の人間が考えるべきことです。臨床での経験やモデル事業で培った知識を共有し、患者の意思を尊重する医療・ケアを全国に広めていきたいと考えています。

プロフィール

1971年、神戸大学医学部 卒業。76年、神戸大学大学院 医学研究科修了・医学博士。76年〜78年、米国シカゴ大学 医学部 マイケル・リース医療センター 研究員。83年〜88年、神戸大学 講師 医学部附属病院。86年〜87年、米国国立衛生研究所(NIH) 客員研究員。93年〜98年、兵庫県立高齢者脳機能センター 副院長。98年〜10年、 神戸大学大学院 医学研究科 教授。06年〜10年、神戸大学 医学部附属病院 副院長。10年より本学教授(総合リハビリテーション学部)。

主な研究課題

  • 精神疾患、認知症に関する研究(認知症 , 介護 , dementia , mental disorders , BPSD)
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