2014年11月
学んだ知識を実践的に試す
法律討論会を開催in Focus


神戸学院大学のSocial in ~地域社会とともに~
学んだ知識を 実践的に試す 法律討論会を開催  小松昭人 法学部 准教授

身近でありながら考えさせる
民法の問題で白熱した議論を展開

小松昭人 法学部 准教授
討論会

神戸学院大学法学部では、2004年より、民法を専攻する2年次ゼミ、3年次ゼミが中心になり年1回の法律討論会を開催しています。法律討論会を学部行事として実施している法学部は全国的にも少数で、本学の大きな特色です。熱い議論が飛び交う討論会には、学外から他大学の教員や法曹関係者の他、討論会に参加した経験のある卒業生も参加し、学生たちとの交流を深めています。

討論会で扱う問題は、学内外の民法を専攻する大学教員に作成を依頼しています。今回の問題は「他人の物の賃貸借」で、過去に討論会にご参加くださった先生が「あの熱気に応える問題を作りたい」と力作を寄せてくださいました。「他人の物の賃貸借」というと分かりにくいですが、例えば、住居の賃貸借で物件の所有者だと思っていた賃貸人が、実は本当の所有者でなかったらどうなるか。賃借人がすでに支払った賃料や敷金はいったいどうなるか。身近な例でありながら考えさせられる問題だと思います。

討論会の一カ月前に問題が公表されると、参加団体に所属する学生たちは団体内で問題を検討し、「立論」と呼ばれる解答を作成。各団体は「立論者」を一名選出します。討論会の当日、立論者は10分間で自分の立論を発表し、次いで3分間の質問考慮時間を挟んで約10分間、会場内にいる人の質問に答えます。閉会式では、審査の結果に従って、上位の立論者および質問者を表彰し、賞品を授与します。

かみ合った議論のためには
基礎トレーニングが不可欠

小松昭人 法学部 准教授
討論会集合写真

討論会当日まで、立論者は仲間といっしょに多くの時間をかけて勉強しますが、壇上では独力で質問に答えなくてはなりません。討論会に向けた一カ月は決して楽ではありませんが、立論者を経験したほとんどの学生は「苦しかったけれど挑戦して良かった」と言います。立論者に劣らず質問者の役割もとても重要で、「良い質問をするために勉強しよう」と学生たちに話しています。数百人の目の前で質問をするのは勇気がいりますが、自分の質問に立論者がどう返し、さらに自分はどう切り返すのかを体験することは、ディベートやプレゼンテーションの能力を高める絶好の機会です。ぜひ積極的に参加してほしいと思っています。

質問と答えがきれいにかみ合った議論が繰り広げられるのは、とても気持ちが良いものです。スポーツに例えると、個人の勉強が個人トレーニング、ゼミが集団でのトレーニング、討論会はいわば本番の試合です。充実した議論をするには基礎的な学習が不可欠だということを、学生たちには繰り返し伝えています。

討論会がきっかけとなり、
研究者・法曹を目指す学生も

法律討論会
イギリスのケースブック(学習用の判例集)や歴史に関する書籍「イギリスの判例には小説を読むような楽しさがあります」。

イギリスのケースブック(学習用の判例集)
や歴史に関する書籍。「イギリスの判例
には小説を読むような楽しさがあります」

小松昭人 法学部 准教授

回を重ねるうち、過去に討論会に参加した大学教員が出題者となったり、討論会経験者の卒業生が司会者や審査員を務めたりするなど、良いサイクルが生まれています。特に審査員の全員を研究者や法曹の卵である本学卒業生が務める今回の討論会は、一つの到達点であると思っています。開催当初から同僚の教員と「将来、この討論会から研究者や法曹を出したい」と願っていましたので、その目標が達成されつつあることを大変喜ばしく思います。また、討論会をきっかけに法律の面白さに目覚め、研究者や法曹の道を歩む先輩が母校の後輩たちに胸を貸すことは、素晴らしく意義のあることだと思っています。

一方、公務員や一般企業へ就職を希望する学生たちにとっても討論会は貴重な機会です。今の学生たちには集団で協力し合って何かを成し遂げる機会があまり多くないため、皆で協力して討論会を運営した経験は大きな自信となり、就職活動や実社会の場でも大いに役に立つと考えています。

本学法学部には、この他にも模擬裁判や刑法討論会、刑事法シンポジウムなどの学生主体の実践的な学びの場が多く、勉強の成果を試す機会に恵まれています。また、ドラマのロケで使われるほどリアルな法廷教室や、19世紀のイギリス議会の議事録などの貴重な資料を揃えた図書館に見られるように、施設面も充実しています。本学は、2016年に創設50周年を迎えます。今のこの充実した教育環境があるのも、本学の卒業生と教職員の、これまでの絶え間ない努力のおかげです。本学の創設者、森茂樹博士は、「いつの世にも、後世に残る大学」を目指していました。本学の歴史を踏まえ、現在の教育環境を後世に伝えるために、われわれも努力を重ねていくつもりです。

恩師の勧めで大学院へ。
課題先進国イギリスの法律を研究

英国留学の記念にロンドン・パディントン駅で買ったパディントンベア
英国留学の記念にロンドン・パディントン駅
で買ったパディントンベア

私自身は、幼い頃から世の中の仕組みについて興味を持っていたこと、戦争経験者の祖父の話から歴史に興味を持ったことなどから、世の中を知るための学問をしたいと思い、法学部に進みました。今のような研究者の道は、学生時代に病気をして卒業後の進路に悩んだとき、ローマ法を専門にしていたゼミの恩師が「大学院で勉強してみないか」と勧めてくださったのがきっかけです。

研究課題である「イングランド法」は世界に影響を与えた法です。かつてイギリスの植民地であった国々、オーストラリア、カナダ、インド、マレーシア、シンガポール、香港などでは、イギリスの法制度が取り入れられています。また19世紀のイギリスは、今のアメリカのような超大国であり、課題先進国として、格差、規制、貿易などの、現在に通じる様々な問題を抱えていました。現代の問題を先取りしていた19世紀のイギリスで裁判官や法律家が法律の問題にどのように取り組んでいたのか、イギリスの法の歴史を研究することで、現代を見据え、さらに将来を見通していきたいと考えています。

プロフィール

1994年、九州大学法学部 卒業。99年、九州大学大学院 法学研究科 博士後期課程修了、博士(法学)取得。99~01年、九州大学 助手。03年より神戸学院大学助教授。07年4月より准教授。

主な研究課題

  • 民法、イングランド法(とくに私法)、比較法(判例法、代理、契約の解釈)

Information

第15回神戸学院大学法学部法律討論会
日時:2014年11月29日(土)13:00~17:30
テーマ:「他人の物の賃貸借」
場所:神戸学院大学 ポートアイランドキャンパス B号館3階B302講義室
問い合わせ先:神戸学院大学法学部 小松昭人研究室(E-mail:komatsu@law.kobegakuin.ac.jp)
※入場無料、一般参加可
第15回神戸学院大学法学部法律討論会チラシはこちらから

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