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2014年1月
高齢化率の高い地元地域を 学生の力で活性化。

神戸学院大学のSocial in 〜地域社会とともに〜 高齢化率の高い地元地域を 学生の力で活性化。 西垣 千春 総合リハビリテーション学部 教授

神戸学院大学は、高齢化率の高い地域の活性化に、学生の力を生かす実践活動に力を入れている。評価が高い「夏祭りinあさぎり」と「春よ来い祭りinあさぎり」も、企画運営しているのは、総合リハビリテーション学部・西垣千春教授が指導する学部生と大学院生。毎回、高齢者や子どもたちなど200人を超える参加者でにぎわっている。

学生たちが企画した「祭り」が評判

総合リハビリテーション学部 教授 西垣 千春

2012年からスタートした「夏祭りinあさぎり」と2013年から始まった「春よ来い祭りinあさぎり」を学部生や大学院生が企画することになった背景は、有瀬キャンパスに隣接する「明舞団地」の高齢化。「明舞団地は昭和30∼40年代に開発されたニュータウン。当初は30代くらいの人たちが入居しましたが、子どもたちが巣立って人口が減り、現在は高齢者人口が約4割を占めています」と西垣千春教授。高齢者が多いと地域行事への参加率が低く、健康に関する講座などを開催しても、参加者は行事の関係者ばかりという状況が続いていたという。そこで明石市医師会や在宅介護支援センターが「学生の力で地域を活性化できないか」と西垣教授に相談。学部生と大学院生が、どのような行事なら高齢者が気軽に集まり、若い世代との交流もできるのか、明舞団地の現地調査なども行いながら模索したという。

そして第1回の「夏祭りinあさぎり」を朝霧地区で開催。医師会・薬剤師会による健康講座をはじめ、生活相談にカフェ、地域の高齢者が教えてくれる簡単な編み物講座などのプログラムを実施。例年の10倍近い参加者が集い、朝霧地区在宅サービスゾーン協議会から学生たちに感謝状が贈られた。「多様なプログラムを組み合わせることで、さまざまな年代の人にアピールしようと考えました。それまで顔を出していただけなかった高齢者も足を運んでくださるなど学生たちの努力が報われ本当にうれしかったです」。

そして第1回「夏祭りinあさぎり」の反省を踏まえ、翌夏の第2回では、あさぎり病院の作業療法士による体操や、理学療法学専攻の教員・学生による骨粗鬆症の計測などに加えて、幅広い年代に楽しんでもらえる場づくりとして、かき氷や綿菓子の屋台なども出店。さらに夏だけでなく春にも開催してほしいという地元の依頼を受けて、西垣教授の基礎ゼミ(1年次生)の学生たちが企画して「春よ来い祭りinあさぎり」を実施。こまや竹とんぼなどの昔遊びに、神戸学院大学の管弦楽団(課外活動・文化会)による演奏会も行われた。

高齢者の困窮を予防する研究に取り組む

学部生と大学院生の活動を、陰になり日向になりサポートしてきた西垣教授の専門分野は「地域保健福祉」。現在最も関心を持っている研究テーマは「生活困窮の原因と予防」だという。

「人は生きていく中でさまざまな問題課題を抱えます。私は、それらによって生活が壊れてしまうことがないよう、今困っている人たちの困窮の原因を探り、予防のための方策を考えたい。高齢者の困窮、失業や若者のワーキングプア、母子家庭の生活苦などについて、対症療法的な対策でなく、予防という視点で取り組んでいるところです」。

西垣教授が福祉の世界に興味を持つきっかけとなったのが、中学時代に体験した高齢者施設でのボランティア活動。「人生の最後を過ごす場所としてふさわしいのかどうか、施設の状況に疑問を感じ、福祉について学びたいと思いました」。そして特に高齢者福祉の研究において、健康の問題は避けて通れないことに気づき、大学院では医科学研究科に進み、公衆衛生学教室で勉強した。「私以外は全員が理系という状況で毎日が大変でしたが、具体的データ・事例を扱うことの面白さと、予防というものの大切さを知りました」。そして医学の博士号を取得後、大学の医学部助手を務め高齢者関係の実習・研究を担当。医師・保健師をはじめ、多くの医療保健関係者との出会いがあり、当時の人脈は自らの研究活動で大いに役立っているという。「健康の問題は人の生活を大きく変えてしまいます。保健医療の知識が多少あることで、福祉の視点だけでは見逃しがちな問題に気づき、より適切なアドバイスにつながっていると思っています」。

大学の知的・人的資源を地域につなぐ

総合リハビリテーション学部 教授 西垣 千春

西垣教授の研究・活動を支えているのは「困っている人がたくさんいるのに、放っておいてはいけない」という熱い思い。その静かな情熱は、指導する学部生や大学院生にも伝わり、地域活性化に学生の力を生かす実践活動は徐々に広がりを見せている。

また「私のゼミには男子学生が多いのですが、みんなで協力して何かに取り組む意味を感じとり、同時に、最後まで一緒にやり遂げる達成感も味わっているように思います。行事のあとには地域の人たちが感想を送ってきてくださり、それを読むことで、誰かの役に立った、評価されたという喜びも感じているようです」。さらに、これらの活動は学生の進路にも少なからぬ影響を与えるようで、「これまでの視点が変わり、卒業後は地域に根付いた企業で頑張ろうという学生が出てきています」。

「夏祭りinあさぎり」と「春よ来い祭りinあさぎり」などの地域活動は、今後も年2回程度のペースで継続して実施していきたいという。「学生だけでなく私たち教員も、地域の人たちの生活に役立つさまざまな分野の情報を提供していけます。この活動は、大学が持っている知的・人的資源と地域がつながる絶好のチャンスだと思っています」。

プロフィール

関西大学社会学部卒業後、大阪大学大学院医科学研究科修士課程修了、大阪大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士(1988年 大阪大学)。89年〜91年、大阪大学医学部助手。98年〜2005年、四天王寺国際仏教大学人文社会学部助教授、05年から現職。

主な研究課題

  • 地域保健福祉活動(キーワード:予防、コミュニティ、健康)
  • 生活困窮の原因と予防(キーワード:生活困窮、リスク、予防)
  • 働けない理由(キーワード:生活困窮、健康、労働環境)
  • 社会資源の理解と活用
  • 相談援助の記録と活用
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