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2013年12月
防災教育を軸とした減災プランを 地域から日本、そして世界へ。

神戸学院大学のSocial in 〜地域社会とともに〜 防災教育を軸とした減災プランを 地域から日本、そして世界へ。 舩木 伸江 人文学部准教授

阪神・淡路大震災を経験した神戸学院大学ならではの教育プログラムが、学部横断型学修システムとしても注目される学際教育機構「防災・社会貢献ユニット」。学生を主体とした社会参加型の実学教育が特長で、人文学部の舩木伸江准教授は、学生と共に「防災教育を軸とした減災プランの推進」に取り組んでいる。

防災マインドを持つ市民を増やしたい

小学校での防災の出前授業
小学校での防災の出前授業1
市民救命士講習

舩木伸江准教授は、阪神・淡路大震災が起きた1995年に神戸学院大学に入学。「家を失った友人もいて、神戸の復興と共に歩んだ大学4年間でした。何か自分にできる事があればと卒業後もずっと考えていました」。そして北アリゾナ大学(米国)で教育心理学を学んで日本に帰国。阪神・淡路大震災をきっかけに設立された「人と防災未来センター」で震災資料専門員の仕事に携わったことがきっかけとなり、防災教育について学び始めた。そして2006年、神戸学院大学に「防災・社会貢献ユニット」が開設されるにあたり、プログラム・コーディネイターを務めたという。

「防災・社会貢献ユニット」で舩木准教授が担当しているのは「防災教育を軸とした減災プランの推進」。これは防災専門教育や防災に関する実務家の育成、地域との連携による減災力の向上などを目指したプロジェクト。舩木ゼミを履修する学生たちは活動の一環として、地元の幼稚園、小中学校などで防災の出前授業をしたり、防災教育のための教材づくりなどに取り組んでいる。「神戸市消防局と連携して、救急インストラクターの資格を持つ学生による市民救命士講習なども実施しています。学生が指導者となり市民救命士の育成に関わるという試みは全国でも珍しいと思います」と、舩木准教授は学生たちの活躍に目を細める。

「防災・社会貢献ユニット」の教育の特長は、学生が地域に出て行き大学で学んだことを地域の人に伝え、地域の人にも現場の知恵を教わるという、大学と地域の相互教育だ。「学生には知識だけでなく、大学や地域で得た『知識の生かし方』も経験させたいと思っています。また学生たちも一人の市民。やがて社会に出て働き家庭を持つ彼らの防災知識・知恵が増すことは、防災マインドを持った市民が増えていくことにつながると考えています」。

学生の出前授業が子どもたちに人気

「防災・社会貢献ユニット」のプロジェクトがスタートして8年目。神戸学院大学が強力に推進する防災教育は、広く市民に周知されるようになってきた。学生たちの活動がメディアで紹介される機会も増え、また現場での活動の評判が口コミで教育界に伝わり、出前授業を希望する幼稚園、小中学校が急増しているという。

子どもたちに人気が高いのが「防災レンジャー」による防災教室。「学生たちが5色のコスチュームを着て登場し、一緒に体を動かしながら、防災について楽しく学んでもらっています。子どもたちはレンジャーに夢中で、反応は非常に良いようです」。

防災レンジャー
「非常持ち出しぶくろを考えてみよう!」というカードゲーム

また学生が開発した防災に関する教材で好評なのが「非常持ち出しぶくろを考えてみよう!」というカードゲーム。非常持ち出しぶくろに何を入れておくかをゲームで子どもたちに考えさせるもので、帽子・チョコレート・タオル・ウェットティッシュ・水などを描いた36種類のイラストカードの中から9つを選んでマス目の中に置いていく。「準備しておきたい物を知識として伝えるのではなく、何が必要かを自分自身で考えさせた後で、それらの必要性を説明すると、身をもって理解できるんです」。これは内閣府などが推進する「防災教育チャレンジプラン」から支援を受け作成した教材。実費で頒布されており、教育現場からの注文数が増えているという。

社会での活動に関わる学生たちの成長は著しく、「一年ごとに頼もしくなっていきますね。現場での予期せぬ事態にも、知識や体験の積み重ねにより頭の切り替えが早くなっています。地域とのやり取りによりコミュニケーション力やプレゼン力も培われ、今後、防災だけでなく社会のあらゆる分野で役立つと思っています」。

このプロジェクトで学んだ学生は警察官や消防士など公務員の道を選ぶケースが多いということだが、「最近は企業でも防災の取り組みが重視されています。また主婦にも家族を守るため防災の知識は必要です。どのような進路を選ぶにしても、生きていくうえでの重要な知識や知恵が培われると思います」。

防災教育のアイデアを若い人たちに期待

舩木 伸江 人文学部准教授

「防災・社会貢献ユニット」のプロジェクトは2014年度から、現代社会学部社会防災学科の学部教育として拡充される。「3年間だった教育プログラムが4年間の学部教育へと発展します。担当教員も増えるため学べる専門分野が広がり、興味ある個別分野についても、より掘り下げて追究できるようになります。また学生たちには多様な個性があり、心に響く経験や気づきのチャンネルも多様ですから、多彩な地域活動や経験の場を豊富に提供していきたいと思っています」。

「防災教育を軸とした減災プランの推進」の今後について舩木准教授は、「防災マインドを持つ人を、どのように日本全体に、そして世界へと浸透させていくかが大きな課題。災害の形態は多様ですから、一つひとつの課題に丁寧に取り組んで知恵を共有し、地球全体の防災力が上がっていけばいいなと思っています」。そして次代を担う高校生ほか若い人たちに対しては、「子どもたちに対する防災教育の新しいアイデアが欲しいですね。また若い人たちが参加したくなるような防災訓練やワークショップの仕掛けも考えていただけると嬉しいです」。

プロフィール

1999年、神戸学院大学人文学部卒業。2001年、北アリゾナ大学大学院教育心理学専攻修了(修士)。06年京都大学大学院情報学研究科博士後期課程単位取得退学。阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター震災資料専門員、神戸学院大学学際教育機構防災・社会貢献ユニットプログラムコーディネーターを歴任。

主な研究課題

  • 防災教育に関する研究
  • 災害経験の語り継ぎに関する研究
  • 防災教育教材・主体的に学ぶ防災教育手法の開発
  • 巨大災害時の広域連携・広域支援に関する研究
  • 災害時の遺体の処置・埋火葬に関する研究
  • カンボジアでの国際支援/ボランティア
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