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2013年2月
病気と薬の相互作用を研究

神戸学院大学のSocial in 〜地域社会とともに〜 新たな医薬品が開発され、それが製品となって以降のフォローにあたる「市販後調査」を研究しています。病院などとタイアップし、薬の服用によって副作用などが生じた場合、大学に持ち帰ってそのメカニズムを調べ、原因解明にあたる研究です。 薬学部助教 福島 恵造

真のテーラーメイド医療を目指して

薬学部助教 福島 恵造
薬学部助教 福島 恵造

近年、個人の遺伝子の差異に着目して投薬、治療を行う「テーラーメイド医療」がいわれていますが、それは一般的に個人差である「個体間変動」を指すもので、一人の患者の状態による相異を示す「個体内変動」ではありません。つまり、実際に薬物治療を受ける患者には、合併症の有無や、肝・腎機能の状態、年齢などさまざまな違いがあるのが普通です。こうしたことを踏まえながら、特定の患者の『その時その時の病態』を考慮しながら投薬、治療を行うことこそが、真のテーラーメイド医療なのです。

「薬が患者の手元に届くまでには、膨大な時間と労力、コストが費やされ、最終的に国の厳しい審査をパスする必要があります。それでも、医療現場で起きた副作用の事例が報告されています。薬は体に良い作用だけでなく、副作用も併せ持っています」と福島助教。当然ながら、製薬企業は開発段階で副作用をできるだけ抑えるよう、医薬品候補の選定や、用法・用量の決定をするなど最善を尽くしていますが、副作用が全くない良薬は簡単にできません。

副作用が出る理由は他にもあります。それは、医薬品の開発段階では調査しきれなかった特殊なケースが存在するからです。福島助教は「ある病気を抱えている患者に対して、その薬は安全で効き目もあることが確立されていても、まったく別の病気を同時に有する患者に対しては害となってしまうことがあります。例えば、ある緑内障の点眼薬は、ぜんそく患者にはタブーです。ぜんそく発作を誘発し、最悪の場合には命にかかわることさえあります」といいます。

患者に最も適した薬物療法を提供するのは薬剤師の責務

薬学部助教 福島 恵造

薬同士の「飲み合わせ」があるように、病気と薬にも相性があります。しかし、病気と薬のすべての組み合わせを事前調査することは困難です。患者のどういった状態が薬物治療に影響するのかを検討する必要があり、病態と薬物治療の多様性を考えると、こうした研究はいまだ発展途上と言わざるを得ません。しかし、福島助教は「当然ながら、製薬企業も市販後調査をしていますが、患者に直接薬をお渡しする私たち薬剤師も事後のフォローをする責任があります。病気と薬の相互作用を一つひとつ精査し、目の前の患者に最も適した薬物療法を提供することが、本来あるべき姿なのです」と語ります。

薬物同士の相互作用については、そのメカニズムや臨床的意義が幅広く議論、検討が繰り返され、臨床結果として構築されています。一方、「薬物と病態の相互作用」も同様に、発生メカニズムを薬物動態学的相互作用と薬理力学的相互作用に分類することが可能と考えます。我々の研究室では、薬物動態学的、つまりある種の病態時における薬物の吸収・分布・代謝・排泄に焦点を当てて研究を重ねてきました。

例えば脂質代謝異常では、脂溶性の高い薬物は循環血中において血中リポタンパクと結合し、血中濃度が著しく増大する。糖尿病病態下では、アルブミンの糖化変性により血中蛋白結合率が変化する薬物とほとんど変化を受けない薬物がある――などです。こうした「薬物と病態の相互作用」における薬物動態の変動様式は、一定の傾向はあるものの、薬物の物理化学的特性(分配係数、酸塩基性など)と薬物動態学的特性(蛋白結合率、代謝・排泄経路など)に大きく依存することが分かってきました。現在は、薬物と病態の相互作用に関与する生理的因子(血中脂質濃度、糖化アルブミン値など)と薬物特性を一つひとつ精査し、基礎情報を収集している段階です。将来的には生理学的パラメータを含む生理学的薬物動態モデルに薬物特性を組み込んだモデルが構築できれば、医薬品開発にも大いに貢献できると考えています。

在学中に問題解決能力を身につけてほしい

子どものころから生命科学に興味があり、研究職が天職と信じて大学院へ進学しました。しかし、「臨床現場を知らずして臨床に還元できる研究ができるのか」と思い、臨床薬学科修士課程へ進学し大学病院の薬剤部に籍を置かせていただきました。まず初めに臨床現場で痛感したのは、自分の無力さでした。薬剤師免許を取得し一人前の薬剤師のつもりでしたが、目の前の患者に対し何もできない。臨床現場で薬剤師として、研究者として、ここで自分は何ができるのか。右も左も分らぬ臨床現場で自問自答することが、本当の意味でのスタートラインでした。

薬学部助教 福島 恵造

薬学部生の卒業後の進路は、病院、薬局、製薬企業、公務員など多岐に渡ります。たとえどんな職業に就こうとも、必ず知らないこと、分らないこと、できないことがあります。「在学中に学んでほしい事は、問題解決能力です。何が原因なのか。次にどうすれば良いのか。試行、評価・考察、情報収集・立案、再試行。Try & Errorですが正しく失敗すること。起き上がる時には、何かを拾って立ち上がること。これは研究活動そのものです。将来、直接研究活動に従事しない学生も多いと思いますが、研究活動を通じて得たことは必ず社会でも生かすことができます」

プロフィール

2003年、京都薬科大学薬学部卒業。05年、京都薬科大学大学院臨床薬学科修士課程修了。07年、京都薬科大学博士後期課程退学。博士(薬学)。 07年〜09年、京都薬科大学薬物動態学分野助手。09〜10年、同研究室研究生。10年から現職。

主な研究課題

  • HIVプロテアーゼ阻害薬の適正使用を目的とした基礎的研究
  • 難吸収性医薬品におけるDrug Delivery Systemの開発
  • 移植患者における免疫抑制薬の適正使用に関する薬物動態学的解析
  • metabolic syndromeにおけるdrug-disease interaction
  • 消化管委縮時の薬物吸収動態評価
  • 抗鬱(うつ)薬のPK/PD modeling
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