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2013年1月
従業員は「経費」? それとも「資産」?

神戸学院大学のSocial in 〜地域社会とともに〜 企業が業績不振に陥れば、たちまち浮かぶのはリストラ案。従業員を単なる「経費」と捉えれば、こうした発想に行きつく。でも、そうした人材が海外に流れて、他国の国際競争力アップにつながり、日本企業が苦戦を強いられているケースもある。人的資本は、欠かせない資産でありながら、バランスシートには計上されていない。難しいとされるこうした従業員の価値評価などに関する理論・実証研究を進めています。 経営学部准教授 島永 和幸

リストラは将来の先行投資の放棄でもある

従業員の技能や経験、イノベーション、ロイヤリティなどは、企業の価値創造プロセスで重要な役割を果たす「人的資本」と呼ばれています。人的資本は、会計上、バランスシート(貸借対照表)上の「資産」に計上されておらず、「費用」として処理されています。従業員を「コスト=経費」として捉えれば、「賃金の抑制や削減」といった安易な発想に行きつきます。

経営学部准教授 島永 和幸

「昨年来、業績不振の電機大手が人員削減を加速させていますが、従業員を経費として捉えるなら、こうした支出削減によって短期的には業績が持ち直すことに寄与することにつながるかもしれません。しかし、資産として捉え直せば、リストラを行うことで、将来の人的資本という無形資産の獲得に向けた先行投資を自ら放棄しているとみることもできます」と島永准教授。

2012年度には、科研費補助金若手研究(B)「自己創設無形資産の公正価値会計に関する理論的・実証的研究」に採択された他、学会でも研究グループのメンバーに参加しています。島永准教授は、人的資本などの自己創設無形資産の資産計上に向けて、難しいとされる従業員の価値評価などについて理論・実証研究を進めています。

キーワードは「人材=人財」といわれる人的資本

経営学部准教授 島永 和幸

グローバル経済がますます進展する中、グローバル企業の中ではすでに多様性を持った優秀な人材を国内外から採用し、育成し、いかに社内に引き留めていくかに腐心しています。一方でわが国では、こうしたグローバル企業にも負けないユニークな特色や技術を生かした地場産業も多くあります。地域主権や地域分権といった言葉を耳にする機会も増えています。島永准教授は、「地域住民にとって、地方経済というローカル経済の活性化は雇用や税収、自治体の住民サービスなども絡むまさに死活問題です」と語ります。少子高齢化とともに、人口減少社会の到来を迎える日本。地域社会の活性化においても、「ヒト」の存在が中心です。

神戸学院大学の地方出身学生には、地元にUターン就職するものも多い。島永准教授は、「高校卒業まで地元で暮らし、その地域に愛着を持ち、地元企業に対する愛社精神が旺盛な従業員を採用することは、企業・地域・従業員(新入社員)の三者が「win-win」になれる関係といえます。若い力を地域社会に絶えず送り込むことも、大学のあるべき姿の1つかもしれません」と語ります。

「人材=人財」といわれる人的資本。「企業の製品開発やイノベーション、地域活性化などにおいて、その重責を担うのは他ならぬヒトであることを忘れてはなりません」

「会計学」は難しくて奥が深い。だから面白い

研究では、最先端の領域である知的資産(とくに自己創設無形資産)を取り扱っています。そのため、いまだ未知の部分も多く、認識可能性や測定可能性の問題、監査や課税上の問題など、多くの問題を孕(はら)んでいます。それだけにやりがいもあり、新しい知見が得られる度に「会計学の面白さ」を実感しているといいます。

島永准教授は、「基礎会計学」、「財務会計」などの授業を担当。いったん社会に出れば、会計や経営学などの知識がいかに重要であるかを認識できると思いますが、学生たちには「会計学の面白さ」を伝えていくことが大事であると考えています。

経営学部准教授 島永 和幸 著作
経営学部准教授 島永 和幸

そこで考えたのが、「株式のバーチャル投資学習」に参加することです。3年次の演習Tでは、生きた経済に触れられるよう、ほぼ毎年のように日経STOCKリーグに参加しています。2012年度も4チームに分かれて、チームごとに投資テーマを選ばせ、500万円の仮想資金を元手に、約20社の企業に分散投資を行っています。

日経STOCKリーグに参加すると、当然ながらゼミだけでは時間が足りません。そのため、メンバー同士が集まってミーティングを繰り返したり、手分けして資料収集や企業分析(会計の知識を用いた財務分析を含む)、レポート作成を行ったりするなど、能動的に行動するようになります。多くの講義で、学生たちは基本的に受け身であるため、積極的に発言したり、自ら考えて主体的に行動したりする場面は限られていますから、その生き生きとした表情や達成感を見ると、「場」を提供してあげることがいかに大事であるかが分かります。

参加した学生に日経STOCKリーグの感想を尋ねると、「3年間で1番勉強した」、「就職活動の面接のときに役立った」という答えが返ってきます。日経STOCKリーグは、単なる株式売買ゲームというツールの枠を超え、リーダーを中心としたグループワークのスキル向上(リーダーシップ、休んだ人のフォローアップ、議論の進め方など)や、投資先やレポート作成に当たっての財務分析、文章表現スキルの向上にも役立っていると考えています。「なぜ経営学や会計学を学ぶのか?その答えを見つけ出す良いきっかけになればと考えています」

プロフィール

1998年、長崎大学経済学部卒業。2003年、神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了(博士号(経営学)取得)。2003〜2004年、神戸大学大学院経営学研究科学術研究員、助手を経て2004年、神戸学院大学経営学部講師。2007年、神戸学院大学経営学部准教授となり現在に至る。2011年から国際会計研究学会幹事を務める。主な研究業績に,「自己創設無形資産会計に係る当初の会計処理―IASB 審議提案とAASB 討議資料第138号に焦点を当てて」『国際会計研究学会年報』2010年度、135-152、242ページ、2011年などがある。

主な研究課題

  • 無形資産の公正価値会計
  • 金融商品の公正価値会計
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