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2010年4月
地域福祉は福祉の中核を担い 社会変革を促す力になる

知の“今”に挑む研究者たち地域福祉は福祉の中核を担い 社会変革を促す力になる。 総合リハビリテーション学部 社会リハビリテーション学科 藤井 博志 准教授

現場での実践を研究につなげる

社会福祉の分野に進んだきっかけは、高校時代に障がい児の世話をするボランティア活動をしたことでした。在宅の障がい児の実態を見て社会福祉への関心が深まったのです。大学で専門に学んだのは地域福祉です。障がいがあっても地域で生きられるような支え方を「地域ケア」といい、そのことや福祉のまちづくりへの住民参加の在り方を学びました。最初に就職したのは兵庫県社会福祉協議会(県社協)です。県社協は県域の福祉施設や民生委員、市町村社会福祉協議会のとりまとめ、連絡調整、さらには研究開発や研修、指導などをする機関です。大学で学んだことがストレートに生かせる職場で、19年勤め、さらに専門職として研究を深めたいと考え大学に移ったのです。私が専門にする地域福祉は、現場に出て現場の人と一緒に実践し、それを研究素材にするので、大学での研究方法は県社協のころと変わっていないと言えるでしょう。

今の福祉に求められているのは、組織化する力

CLC主催のセミナーの内容を印字したクリアファイルを手に、本学で開催する意義を語る藤井教授

CLC主催のセミナーの内容を印字したクリア
ファイルを手に、本学で開催する意義を語る
藤井教授

今後、福祉の需要はさらに増えていくはずですが、その中核に位置づけられるのが地域福祉です。例えば社会福祉士という国家資格があり、昨年そのカリキュラムが新しい内容に変更され、地域福祉を基盤に組み立てられました。また2000年に社会福祉の法律が変わり、この中で国が今後の福祉は地域福祉を大きな柱として進めると明記しています。今までは、日本では人間の属性別に法律がつくられてきました。児童福祉、高齢者福祉、身体障害者福祉と、縦割りの法律でそれぞれ取り扱われてきました。これでは複合した問題への対応は難しいので、あらゆる人が生活する地域、コミュニティを基盤にして福祉を統合していこうというのが現在の流れです。新しい福祉を創造していく上で重視されているのが、オーガナイズやコーディネーション、ネットワーキングという考え方です。つまり、地域を組織化したり協働を促進させていく力が福祉の分野で求められています。福祉は人が生きていくのを支えるのが原点ですので、例えば街を身体障がい者が電動車いすで移動できるように整備すれば移動障がいの問題は解消されます。だから社会福祉というのは個人への援助と、社会の環境そのものを変えること。まさにコミュニティオーガナイザーだったオバマ大統領がいっている社会変革そのものが社会福祉なのです。

私の研究の具体的なテーマは@地域福祉活動への住民参加Aそれを支援するコミュニティワークを担う人材育成B地域で暮らせる社会福祉、社会資源の在り方、特に民家を使ったデイサービスである「宅老所」研究C地域福祉計画研究の4つ。地域福祉研究の現実は、現場と研究がまだかなり乖離しています。私は両者を結び付ける実践開発研究に力を注いできました。Aのコミュニティワークを担う人材育成については、国内ではまだ養成の体系化がされていませんが、私はこの研究で先鞭をつけてきたと思っています。コミュニティワークとは、米国のコミュニティオーガナイゼーションにあたり、地域を組織化する、ということ。そしてコミュニティワーカーは、住民の地域活動を援助する専門職です。日本で一番当てはまるのは社会福祉協議会の職員です。

本学を会場に開催される「気づきを築くユニットケア全国実践者セミナー」には、全国から福祉の現場で働く方々が集合する

本学を会場に開催される「気づきを築くユニッ
トケア全国実践者セミナー」には、全国から福
祉の現場で働く方々が集合する

現在私は、コミュニティライフサポートセンター(CLC)の活動にも関わっています。CLCは全国規模のNPO法人で、主に地域生活支援に関わる優れた実践をセミナーなどを通じて広める運動をしています。CLCの活動のひとつとして、本学と共催で「気づきを築くユニットケア全国実践者セミナー」を毎年3月に開催しています。ユニットケアとは、今までの特別養護老人ホームのように入所者を大きな集団としてケアしていくのではなく、関係がつくりやすい少人数の単位にグループ化し、そこを生活の場にしながらケアしていく個別ケアの方法です。宅老所からヒントを得ています。このユニットケアのセミナーには、毎回約1,000人が集まり、2日間にわたり約150本の実践報告が行われます。本学で開催するため、社会リハビリテーション学科の学生も運営に携わっています。これを通して学生たちは現場の方たちとの触れ合いや実践報告から学べるので多様で豊かな教育効果がありますし、就職面での効果も期待できます。もちろん、本学にとっては全国規模の社会貢献になっています。

世帯の縮小化や若者の貧困で福祉ニーズは増大

地域福祉の現場では、90年代から2000年代に在宅サービスなどが飛躍的に充実してきました。しかし、それ以上に社会の変動や人々の意識の変化が急激です。この10年間は世帯の縮小化が進み、人と人のつながりが希薄化するとともに、社会的孤立や格差、また社会的排除の問題が顕著です。これらの社会問題に対して今は福祉政策の有りようや支え方の大きな転換期となっています。今の日本は高齢化対策だけでなく、若者の貧困問題にも早急に対処しなくてはなりません。これらに対応して、社会を地域基盤からつくり変える必要があるのです。社会福祉イコール生活対応ですから、若者や高齢者の生活基盤をちゃんとつくっていかない限り安心できませんが、新たな生活・福祉の問題に対処する政策とともに、具体的な実践方法はまだ開発されていない分野が多いのが現実です。その実践方法を具体化していくのが私の役割だと考えています。

プロフィール

1981年、同志社大学文学部社会学科(社会福祉学専攻)卒業。1990年、同志社大学大学院文学研究科社会福祉学専攻 博士課程前期修了(文学修士)。1981年、兵庫県社会福祉協議会に就職。2001年、大阪府立大学社会福祉学部(専任講師)。2006年より神戸学院大学准教授。

第59回 土曜公開講座 メインテーマ「私たちのくらしをよくするために」

  • 時 間: 14:00〜16:00
  • 場 所: 有瀬キャンパス 9号館1階 911講義室
  • 受講料: 無 料
月 日 講演テ−マ 講 師
5月15日(土) 住民参加でつくる福祉のまちづくり 総合リハビリテーション学部
社会リハビリテーション学科
藤井博志 准教授
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