1. 神戸学院大学
  2. 學報.net
  3. in Focus
  4. 2008年度
  5. 2009年1月 “薬学の殻”を突き破れ― 熱血教員が語る、多様な社会との交流のススメ

2009年1月
“薬学の殻”を突き破れ― 熱血教員が語る、多様な社会との交流のススメ

“薬学の殻”を突き破れ― 熱血教員が語る、多様な社会との交流のススメ 井口 伸 薬学部 准教授

社会の流れをとらえ、
新しい教育に挑戦

私の研究者としてのキャリアは、現岡田学長の指導のもと、学位を取得したときからスタートしています。当時の私は、生理活性ペプチドの合成研究を主な課題とし、全国の若手研究者に呼びかけて淡路島で勉強会を実施したり、『ペプチドレター』という学会誌の編集委員をするなど、精力的に研究活動を行っていました。ところが米国での留学から帰国し、しばらくすると世の中の薬学の流れが科学一辺倒から、より医療との結びつきを重視する「医療薬学」に変化しつつありました。本学薬学部もその潮流に沿った形で教育理念を転換し、「医療薬学教育研究センター」を学内に開設。私も医療薬学を教える研究者にトライしようと意を決しました。ただ、その頃の私にとって医療薬学はまったくの専門外。そこで、基礎から医療薬学を学ぶため、まず神戸大学医学部附属病院の薬剤部に1年間国内留学することになり、修了後はセンターで教鞭を執ることとなったのです。その後、臍帯血(“へその緒”に含まれる血液)の保存に用いる凍害防止剤の開発研究にも着手。今は、そうした研究を継続しながら社会薬学部門に属し、社会経済における医療制度を考える研究を行っています。

積極的に外部とネットワークを築き、
得られた最新情報を学内に還元

2007年度卒業研修会の模様

2007年度卒業研修会の模様

私は、今まで常に社会との交流を積極的に図ってきました。製薬会社の方や調剤薬局の経営者、そして医師など、私が日頃から接している方々は実に多様です。さまざまな立場の方とお互いに情報を交換し、意見を戦わせることで、薬学が、あるいは薬剤師が、今の社会の中で何を求められているのかを知ることができると考えるからです。本学では、薬学部同窓会の主催で「卒後研修会」を30年近くの長きに渡り実施しており、私は発足当初から世話人を務めてきました。この研修会は、医師をはじめとした医療関係者を講師として招き、卒業生だけでなく地域の薬剤師の方々にも参加を呼びかけ、医療・薬学分野の最新情報を享受していただくことを主な目的として、毎年開催しているものです。そのなかで私は、これまでの人脈を活かして講師のコーディネートを主に担当しています。薬学に関わる人間は、研究に没頭するあまり、ともすれば異文化に触れる機会を失いがちです。同じ分野や研究室の人たちが同じ価値観を持って研究すれば、どうしても視野が狭くなってしまいます。私は現在、就職指導員も担当していますが、こうした外部とのネットワークから得た情報を学生にも還元し、彼らの就職に幅広い目を向けてあげたいと思っています。

“より意欲を。より積極性を”―
薬学部生を大いに煽り続けたい

薬学部 准教授 井口 伸

今の医療や薬剤師を取り巻く環境は激変しています。2006年度の薬事法改正による登録販売者制度の成立によって、大量の販売者が生まれています。しかしこのことで、今後はドラッグストアにおける薬剤師の就職が困難になるかもしれません。また、本学薬学部は2006年度入学生から6年制に移行しているため、再来年度より2年間は卒業生を送り出すことができません。薬学部生に人気のある製薬メーカーのMR(医薬情報担当者)は、今までのところ文系学部生に比べて就職しやすい傾向にあります。しかし、その空白の2年間で文系学生への評価が高まればどうなるのか。本学薬学部の学生は、今までのように大学を卒業しさえすれば就職できるという考え方は通用しないという現実を、しっかりと自覚しなければならないのです。そのためにも、私はできるだけ学生たちに“今”の情報を伝えていきたい。彼らが希望すればできるだけその望みを叶えるための力になってあげたいと思っています。今の私に課せられた大きな使命は、将来の進路に対して、薬学部生の意識をより意欲的に、より積極的な方向に向かうように教え導くことです。そのためにも、今後も本学の一教員としてもっと学生に関わっていかなければと考えています。

プロフィール

1976年、神戸学院大学薬学部薬学科卒業。神戸学院大学修士課程(薬学研究科、薬品化学)修了後、薬学博士(京都大学)。神戸学院大学薬学部助手、米国マサチューセッツ大学博士研究員を経て、神戸学院大学薬学部講師。2007年より神戸学院大学薬学部准教授。

主な研究課題

  • 臍帯血保存に用いる凍害防止剤の開発
  • 錠剤の分割がもたらす種々の影響について

Focus on Lab ―研究室リポート―

4年制から6年制へ移行するメリットとは

現代の医療・医学が抱える問題に取り組む井口准教授と学生たち

現代の医療・医学が抱える問題に取り組む
井口准教授と学生たち

井口准教授の担当する「医療システム学研究室」では、現代の医療・医学に潜む問題を取り上げ、その解決方法を探る研究を行っています。今年度の研究生が取り組んだテーマは、ガンマ―シクロデキストリンを用いて体内でのサプリメントの吸収を高める技法、薬剤師が在宅介護にほとんど関わっていない現状の指摘と一層の関与を提言したもの、昨年10月に多発性骨髄腫の治療薬として「サリドマイド」が再承認されたことに関する詳細な経緯報告、インターネット上に氾濫するダイエットサプリメントブームの陰に潜む危険な実態など、それぞれ視点はさまざま。しかし、どれも今、まさに起こっている問題を鋭く指摘している点が評価されると、井口准教授は言います。また、「今までの4年制では、今回学生が発表してくれたような優れた研究を継続したいと思っても、卒業とともに断念せざるを得ませんでした。また、4年間では、学生は薬学に関する知識や技術を修得することで精いっぱい。それが2年間延長されたことでじっくりと研究することができ、なおかつ修得した知識や技術を応用し精度を高める環境が整ったといえるでしょう。確かに就職に関しては未知の部分も多いのですが、研究においてはこの時間を有効に活用していきたいと思っています」と、6年制移行のメリットを語っていました。

ページトップへ