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2008年10月
新サービスの開発と、ユーザーの意識開発との両輪で“ケータイ”の可能性をとことん追求

新サービスの開発と、ユーザーの意識開発との両輪で“ケータイ”の可能性をとことん追求 小川 賢 Masaru Ogawa 経営学部 准教授

大学院時代、“情報学”に目覚めて研究の道へ

携帯電話、いわゆる“ケータイ”は、電話機能だけではなくメールの送受信やホームページ・放送番組の閲覧、電子決済機能のほか、鉄道や航空機の搭乗機能まで搭載された多機能携帯端末として、今や私たちの日常生活にかかせないものとなっています。このような携帯電話の発達が、社会システムや我々の生活、企業活動にどのような影響を及ぼすのかということに興味を持った私は、“情報学”を探究する道を歩むこととなったのです。研究会や審議会委員を務め電子情報通信政策の研究者である大学院時代からの恩師や、携帯から“ケータイ”へのパラダイムシフトを推進してきた携帯電話会社の副社長、パソコンやケータイを活用した行政サービスの展開を自治体の情報政策の最前線で企画立案していた課長たちとの出会いが、私に大きな影響を与えました。

急速に発達する情報通信分野の“ルール”を考える

小川准教授が委員として加わり取りまとめられたセキュリティポリシーのための規則集。ホームページ上で閲覧が可能。

小川准教授が委員として加わり取りまとめられたセキュ
リティポリシーのための規則集。ホームページ上で閲覧
が可能。

パソコンやケータイ、インターネットをはじめとする情報通信技術の発達は私たちの生活を劇的に変化させ、使い方次第では大いなる利便性をもたらしてくれました。しかし、急速に発展してきたことで情報通信の世界にも課題が生じてきています。企業や大学等の組織では膨大な情報を扱い、パソコンやサーバ、ネットワークなどの情報システムをどのように管理・運用していくのか“ルール”をきちんと定めて運用する組織もあれば、ルールが定められていなかったり、現実に即していなかったりする組織もありました。世間では、個人情報保護法の施行や情報システムのセキュリティ水準の向上、健全な運用・利用への要求が強まっていました。2004年1月から電子情報通信学会が設立し、私も委員の一員として参加していた「ネットワーク運用ガイドライン検討ワーキンググループ」と、国立情報学研究所が設置した「国立大学法人等における情報セキュリティポリシー策定作業部会」が合同で、2006年8月から高等教育機関を取り巻く社会情勢への対応を踏まえ、情報セキュリティ対策を検討する上で、具体的な参考事例として役立ててもらえるような規則集を作りました。この規則集は国立情報学研究所のホームページにPDFファイルで公開されています。この活動により、ワーキンググループと策定作業部会は、高等教育機関に適した標準的かつ活用可能な情報セキュリティ規程群を策定し、セキュリティ水準の維持、向上に貢献した功績が認められ、内閣官房長官より「情報セキュリティの日功労者表彰」を授与されました。現在の活動としては、各大学の情報セキュリティポリシー策定の支援や情報セキュリティ教育、情報システムの運用に関する実例や参考となりうる情報を蓄積する体制、システム構築の研究を進めています。計画(PLAN)/実施(DO)/点検(CHECK)/見直し(ACTION)のPDCAサイクルの考え方は、政府機関統一基準にも書かれているように、状況に応じて情報システムの運用体制を見直すのに必然の流れです。その中で、エンドユーザーに近い立場で意見を述べながら、長らく情報通信に関わってこられた専門家の方々とともに、今後も活動を通してルール作りに関わっていきたいと考えています。

ユーザーが安心できる快適・安全な“ケータイ”へ

小川 賢 経営学部 准教授

神戸学院大学に着任して間もない2003年11月に、石川県金沢市の竪町商店街に調査へ行きました。この竪町商店街では、ケータイに表示される2次元バーコードを会員証とした商店街共通ポイントシステムを導入し、商店街全体の活性化を図る試みを実施していました。現在、このポイントシステムは、顧客情報の収集や囲い込み戦略の重要なツールとして広く用いられていますが、当時は今ほど普及していませんでした。そのため、情報システムを活用した地域情報化や電子マネーの研究をしている私としては、非常に関心のあるものでした。大学院時代、指導教員から「人、資金、運営体制の3つが重要である」ということを教わっていたので、調査を行い、自分で感じられたことは、その後の研究に大きな影響を与えることとなりました。

また、数年前まで、大阪府池田市で「ANSINメール」という情報配信サービスが運用されていました。このサービスは、私も参加している「自治体モバイルIT研究会」の中で発案されたもので、市内の小学校でおきた忌まわしい事件を受けて始まりました。住民が登録しておくと不審者情報を携帯電話に配信してくれるというもので、実際に検挙につながったこともあり、自治体・企業・住民の情報システムを活用した連携によるもので大変好評でした。このサービスを発案した「自治体モバイルIT研究会」では、携帯電話会社と関西の各自治体の情報課の職員が参加して、ケータイをはじめとした情報通信機器を活用した住民向けのさまざまなサービスの考案や、情報通信政策や情報通信技術の最新動向を研究することを目的に活動しています。日々の生活をより安全に、かつより豊かにする、ケータイを使った新しいサービスを考案すること。サービスを提供するシステムを構築することが目的ではなく、運用(利用)して技術やニーズに即した内容に改善して提供していくPDCAのサイクルを回す枠組みを構築すること。作る人の思いだけでなく、運用する人、利用する人など様々な立場の人が使ってよかったと思えるシステムにするために提言すること。この3つを自身の使命とし、今後も“ケータイ”を深く探究していきたいと思っています。

プロフィール

大阪大学工学部卒業後、大阪大学大学院国際公共政策研究科博士前期課程修了。大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。現在、神戸学院大学経営学部准教授。

主な研究課題

  • 情報通信社会における経済活動の理論分析
  • 電子決済システムに関する研究
  • 情報セキュリティポリシーに関する研究

Focus on Lab ―研究室リポート―

ゼミ生とともに、
“ケータイ”の新たなサービスを日々考案中

小川准教授のゼミナールでは、“ケータイ”に関するテキストを熟読して“ケータイ”に関する知識を深めるとともに、世の中の動向に関心を持つように経済・ 経営の基礎を学ぶ学修を行っています。そのほか、危機管理や情報政策に携わる自治体の職員や、マスコミ、公共交通機関の方々を講師に迎え、「情報の危機管理」というテーマの講義も実施し、幅広い視点からの情報通信に関する考え方、知識の習得を図っています。さらに、ゼミ生には“ケータイの新しい使い方”を テーマに卒業論文を提出してもらうとのこと。「私が研究を始めた当初と比べて、“ケータイ”機能も随分進化しました。ネットやメールはもちろん、『おサイ フケータイ』や『ワンセグ』まで登場し、現状では、実現できうる限りのサービスは出尽くしたと感じています。ケータイよりパソコンを先に使い始めた私の視点ではなく、パソコンよりも先にケータイを持ち、利用頻度もケータイのほうが圧倒的に多いといわれている世代の学生に、一緒に新たな“ケータイ”の使い方を考えてもらおうと思って(笑)。勉強や通学、買い物など日々の行動から発想を得て、既存の機能を組み合わせや新たにこんなことができるといいなぁという 斬新なアイデアを考えてほしいと学生には注文をつけています」と話す、小川准教授。ゼミ生とともに“ケータイ”を研究し、日々新しいアイデアを練っています。

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