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2008年4月
膨大な論文を発表し続け 抗がん・抗炎症物質を探し求める若きフロントランナー

膨大な論文を発表し続け 抗がん・抗炎症物質を探し求める若きフロントランナー  水品 善之  Yoshiyuki Mizushina 栄養学部准教授

食品素材から
「抗がん」「抗炎症」物質を取り出す

私たちが普段食べている野菜などの食品素材には、人の体に極めて有効に作用する物質が含まれていることがあります。私の研究は、人体に悪い影響を与えることなく体内の生理活性を促す、つまり副作用のない“体にいい”成分を抽出して見つけ出し、その科学的根拠を明らかにすることです。そして、最終的には、サプリメントと呼ばれる機能性食品や化粧品など人の健康や美容に寄与する製品の開発を目指すことにあります。

水品 善之  栄養学部准教授

私は大学院生から助手の時代に、遺伝子の本体であるDNA(デオキシリボ核酸)を合成する酵素タンパク質、DNA合成酵素を精製して、その酵素の作用を抑える物質(酵素阻害剤)の研究をスタートさせました。当時私は、キノコやカビなど土壌中の微生物を培養し、その中から阻害物質を見つけて、さらに癌細胞の増殖を抑制する効果があるかを検証する研究を行っていました。そうした過程の中で、最初に見つけ出した阻害物質が脂肪酸でした。ちなみに、この発見で博士号を取得し、優れた博士論文として井上研究奨励賞を受賞しました。脂肪酸が栄養素の一種だったことから、次第に栄養素に興味を持つようになり、食品素材から人体に有用な物質を取り出すという現在の研究へとつながってきたわけです。私が本学に着任してから7年間研究に携わっているなかで、2つの大きな驚きがありました。1つは、ほうれん草に含まれる糖脂質という成分に癌細胞の増殖を抑える働きがあることを発見したこと。もう1つは、ふきのとうに含まれるペタシフェノールという黄色の色素(ポリフェノールの一種)に、炎症を抑える作用があることを発見したことです。ほうれん草から糖脂質を精製する方法とこの糖脂質の抗がん作用については、特許を出願して現在審査中です。現在、神戸大学医学部附属病院の消化器内科や放射線科と共同で基礎実験や動物実験で効果を精査しており、数年後には、この成分を含む機能性食品の販売にまでこぎ着けたいと考えています。また、兵庫県からの研究助成金(兵庫県COEプログラム)を受けて兵庫県内の健康食品メーカーと共同で、魚のウロコに含まれるフィッシュコラーゲンを精製して、それを用いた保湿クリームの開発も行っています。

学術論文という形で
研究を公表し続けることの意義

私は今まで、20あまりの特許を出願し、毎年20本近く査読制度(レフリーによる審査)がある英語の学術論文を発表しています。特に、論文を発表し自分の研究に関する情報公開をしていくことは、研究を進めていく上で最も重要だと考えています。現在、私の論文を見ていただいた研究者や企業の方から、共同研究の要請を多くいただいています。そもそも、ほうれん草から抗がん物質を発見した研究も、2001年の日本癌学会(横浜)に出席した際に、私の論文を見ていただいた健康食品企業の依頼から始まったことです。

水品 善之  栄養学部准教授

また、大阪市が押し進める健康産業振興に関わる産官学のネットワークにも籍を置き、いつでも地域の企業との連携を図れるようにしています。こうした、研究者と企業、企業と大学、大学と公的機関など、産官学が密に連携することも私たちの研究には非常に大切です。研究者として論文を発表し、それが評価され、さまざまな方面からの要請で研究が始まり、最終的には健康美容に関わる製品を作るという形で社会貢献が実現する。こうしたよい循環を作り出すためにも、論文発表は続けていかなければならないと考えています。

今年、「2008年度(平成20年度)農芸化学奨励賞」という賞を受賞しました。これは、農学系の研究者が主体の日本農芸化学会による農芸化学分野に寄与する優れた研究成果を残した40歳以下の若手の研究者に対して贈られる賞です。毎年、全国7支部から推薦のあった研究者の中から選ばれるのですが、今回、私は初めての挑戦で選ばれました。大変名誉なことです。これも、毎年論文を発表し続けた結果、その内容に対して純粋に評価をしていただいたからではないでしょうか。

体にやさしい“穏やかな薬”で
健康的な生活を

医食同源という言葉があるように、食品には、エネルギーや栄養源としての一次機能、嗜好性としての二次機能のほかにも、三次機能と呼ばれる薬に似た生理機能調節作用を持つ成分が含まれています。それらを抽出して作られた健康食品や機能性食品を食することは、健康に対する不安のすべてに応えうるものではありませんが、健やかな生活を送るための選択肢にはなると思います。体によい物質を食品素材から取り出し健康機能食品や化粧品などに転用するメリットのひとつは、副作用が少ないということ。普段私たちが口にして、すでに体になじんでいる物質だからです。今後も、国民皆長生きし健康的な生活を送るための手助けができるよう、“抗がん”と“抗炎症”を柱に研究を続けていきたいですね。

水品准教授は、財務省所管の公益法人、財団法人ソルト・サイエンス研究財団の平成20年度研究助成「財団設立20周年記念助成」に採用され、助成金を受けることとなりました。

プロフィール

1972年、長野県生まれ。1994年、東京理科大学理工学部応用生物科学科卒業。1996年、東京理科大学大学院 修士課程理工学研究科応用生物科学専攻修了。1998年、東京理科大学大学院 博士後期課程理工学研究科応用生物科学専攻中退。2000年、東京理科大学にて博士(理学)取得。1998年〜2001年、東京理科大学 理工学部 応用生物科学科 助手。2001年〜2004年、神戸学院大学 栄養学部 栄養学科 講師。2007年〜現在 神戸学院大学 栄養学部 栄養学科 准教授。2004年〜2005年および2006年〜現在、独立行政法人産業技術総合研究所 健康工学研究センター 客員研究員。
2006年〜現在 神戸大学 医学研究員。

受賞歴

2001年2月: 第17回(平成12年度)井上研究奨励賞(財団法人井上科学振興財団)
受賞業績: 「長鎖脂肪酸による哺乳動物DNAポリメラーゼβの阻害機構の研究」(博士論文)
2008年3月: 2008年度(平成20年度)農芸化学奨励賞(社団法人日本農芸化学会)
受賞業績: 「DNA合成酵素の分子種選択的阻害剤の探索研究」

主な研究課題

  • 緑色野菜の糖脂質を活かした新規機能性食品の開発
  • 魚介廃棄物由来化粧品の開発
  • 超臨界CO2を用いたホウレン草から糖脂質(MGDG)の抽出と分析 ほか

Focus on Lab ―研究室リポート―

精力的に学術論文発表をこなす水品准教授を中心に
数々の成果を上げている研究室

2004年度、水品准教授の所属する食品栄養学研究室では、当時副学長だった岡田芳男学長の配慮により、高圧下で液化した二酸化炭素を用いて個体から特定の物質を抽出することができる装置「CO2超臨界抽出装置」を神戸学院大学産学連携推進事業として購入。こうした機器を用いた研究の積み重ねにより、ほうれん草からDNA合成酵素の阻害活性が認められる糖脂質の発見につながりました。そうした研究以外でも、本学栄養学部の使命としては、まず、管理栄養士の養成が責務です。2000年の栄養士法の一部改正に伴って“ヒトを対象とする医学的な研究”が重要視されたことで、本学でも、医学部系の研究機関との関係を強化していくことになりました。その一環として、水品准教授は、神戸大学大学院医学系研究科の医学研究員として出向き共同研究を行っています。また現在、研究室に所属する大学院修士課程の学生2名も派遣しています。「私は、天才型ではなく努力型。尊敬する野口英世先生もそうだったように、とにかく真摯な気持ちで、盆正月や土日祭日は関係なく体力が続く限り研究に邁進し学術論文を多く発表していきたいと思っています」とおっしゃる水品准教授。その努力の結果が評価されて受賞した「2008年度(平成20年度)農芸化学奨励賞」の受賞者講演を3月に名古屋で実施しており、12月に神戸でも行う予定となっています。

本学の留学制度(2007年度短期海外研究員制度)により、昨年の4月〜7月の4ヶ月米国・オハイオ州シンシナティ大学医学部細胞生物学研究室で「ヒト癌細胞における中心体の複製を阻害する栄養成分・食品素材の研究」を実施
モダンなオハイオ州シンシナティ大学医学部の基礎研究棟(細胞生物学研究室を含む)の概観

モダンなオハイオ州シンシナティ大学医
学部の基礎研究棟(細胞生物学研究室を
含む)の概観

研究中の水品准教授。アメリカの大学では研究者もTシャツ姿での実験が普通

研究中の水品准教授。アメリカの大学で
は研究者もTシャツ姿での実験が普通

顕微鏡で見た癌細胞

顕微鏡で見た癌細胞

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