―2023年の年頭にあたって―フロントライン

これからも社会・地域と繫がりつづけるために 神戸学院大学長 中村 恵

年頭にあたり、謹んで新春のお慶びを申し上げます。2022年4月より学長を拝命し、九か月を駆け抜けてきました。3年目に入ったコロナ禍は第8波の到来と言われる中、以前と比較すると重症者数の割合がきわめて低位で推移しており、本年度後期より原則対面授業を復活し、教室使用も収容定員の50%制限を撤廃しました。その結果、明らかにキャンパスには学生の姿が増え、教育活動、課外活動を含めて活発化した1年でした。

この2年近くの間、遠隔授業を活用しながら各学部の学びを維持してきましたが、今後は対面を中心とし、遠隔授業を単なる対面回避の手段としてではなく、より前向きな活用が進むのではないかと予想しています。その意味で、遠隔授業の経験は、私たちの教育の在り方に新しい光を加えてくれたとも考えることができます。

2022年に学校法人神戸学院は110周年を迎えました。その中にあって、佐藤前学長から引き継いだ事項とともに、新たに実行あるいは議論してきたことを中心にお伝えしたいと思います。

1 「長期ビジョンと全学的戦略」および「グランドミッション」~第3次中期行動計画へ

2021年度末、佐藤前学長のもとに提出された「長期ビジョン策定ワーキンググループ答申書」を基礎として提案された「長期ビジョンと全学的戦略」およびそれを具体的項目に落とし込んだ「神戸学院グランドミッション」を総合企画会議において、異例の2回にわたる審議を経て、細かな修正を伴いながらも承認いただきました。
2018年度から実行に移してきた「第2次中期行動計画」も2022年度をもって最終年度を迎えます。2022年度は、この「第2次中期行動計画」の最終の点検とともに、次期中期計画である「第3次中期行動計画」の策定をお願いしてきました。
この新たな中期行動計画においては、第1層、第2層といった大きな枠組は変わらないものの、従来やや細かすぎる行動計画であったことを反省し、第3層、第4層の項目数をスリム化し、より集中して改善に取り組むことができるよう配慮しました。
2024年度には大学基準協会認証評価の受審が決定しています。大学としての質保証システムの方針・体制・手続きについて昨年度整備された仕組みを実施に移し、実績を作っていくことになります。とりわけ、基準協会に提出する報告書の様式が「全学的観点から記述すること」となったことから、2023年度には現状の内部質保証推進委員会に認証評価委員経験のある方を加えた新しい体制である拡大版内部質保証推進委員会、いわゆる「7条委員会」で報告書の最終とりまとめが行われることとなっています。

2 社会連携・地域貢献活動および社会や地域の課題解決に向けた研究の推進

本学は、自治体、企業、地域など多種多様な社会連携・地域貢献活動ならびに教育活動を展開してきました。昨年は行動制限の多くが撤廃され、地域社会に乗り出す活動の多くが再開されました。また、高い評価を得ている本学のボランティア活動も再開しつつあります。本学の社会連携・地域貢献活動は実にさまざまな諸機関から高い評価を得ています。
また、本学では寄付研究講座等を含め、社会や地域の重要課題に取り組む研究において、学会での受賞、外部競争資金の獲得などで成果を上げています。本学の存在価値をさらに高めるために、社会的に注目度の高い研究の推進や研究内容の社会への発信にも力を入れていく必要があります。
こうした社会連携・地域貢献活動および地域における研究活動をコーディネートする産官学共創の枠組として、神戸市がふるさと納税を財源とした「神戸地域連携プラットフォーム」の準備を進めており、本学は神戸大学、神戸市外国語大学、甲南大学とともにその準備校に加わりました。
このプラットフォームの下では、①大学等を超えた学生の新しい共創コミュニティネットワークの構築、②地域の将来像の実現のために育成すべき人材育成プログラムの構築および実施、③大学等の研究シーズの産官学共創による社会実装化、④優れた外国人留学生の獲得と定着支援、⑤大学都市神戸の発信と共創拠点の整備の5つの目標が示されており、具体的な事業プランはまだ検討段階であるものの、本学における社会連携・地域貢献活動やすべての学部の教員の研究支援につなげることが可能だと考えています。

3 入試マーケットに生きるブランド力醸成に向けて

2019年度から広報委員会の下に「ブランド力醸成ワーキンググループ」を設置し、構成員による本学の社会的評価の共有、本学の歴史と現状についての共通認識の醸成、各学部の強みと課題の共有などの施策を進めてきました。これに関連して、昨年には校祖・森わさの生涯、初代学長・森茂樹博士の歩みなどを中心にした『神戸学院物語』を法人110周年記念事業の一つとして神戸学院大学出版会から公刊しました。
こうした神戸学院の歴史、神戸学院の長所、特徴を知る営みが実際に生きるのは、本学教職員や在学生だけでなく、高校生たちの入試マーケットでこそとも考えられます。本学が選ばれる理由として「キャンパスがきれい」が常に上位に上がるのは、高校生にとってのブランドだからかもしれません。入試マーケットにどう切り込むか、そこにどのようなブランド価値を根付かせていくかを、本年は考えてみたいと思っています。

4 大学創立60周年に向けた有瀬キャンパスの整備について

「神戸学院大学キャンパス整備基本計画2018-2028」に基づき、大学創立60周年の2026年完成を目指して、有瀬キャンパスの老朽化した複数の校舎に替わる新館(仮称:新1号館)の検討・基本設計が昨年からスタートしました。計画の確実な実現とともに、新1号館建設工事期間に有瀬キャンパスの修学環境が悪化しないよう、現在対策を検討しているところです。

5 データサイエンス教育プログラムのスタート

いわゆるSOCIETY5.0時代に向けての教育プログラムとして、2023年度に全学的なデータサイエンス教育がスタートします。文科省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」認定を目指し、2022年度から共通教育科目としてデータサイエンスの基礎科目を開設しました。そして、2023年度には新たに開設する経営学部データサイエンス専攻に新1年次生を迎えることとなっています。データサイエンス自体は、経営学のみならず、文理含めて多くの学問分野で重要な地位を占めつつあります。そうした点にも目を配りながら、経営学部以外でもデータサイエンスに関する単位取得の認定制度を導入する予定です。

6 「男女共同参画」のさらなる推進~Diversity & Inclusionへ

2022年度は「神戸学院大学男女共同参画推進宣言」の公表から5年、「神戸学院大学男女共同参画推進計画2018-2022」の最終年度を迎えています。この間、推進計画に基づき、多様な取り組みを展開してきましたが、現在推進計画の検証と新たな推進計画の策定が求められています。いわゆる「男女共同参画」だけではなく、ダイバーシティ&インクルージョンに向かうべきではないかとのご示唆も頂戴しており、本年検討してみる価値があると考えています。

神戸学院大学のさらなる展開のためにも、皆様のご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。

フロントライン 一覧