学校法人神戸学院のこれからフロントライン

学校法人神戸学院 創立100周年記念座談会

社会の役に立つ知識と技術の養成に資する教育を行い
しっかりとした精神の持ち主を育てていく

司会 それでは締めくくりといたしまして、「学校法人神戸学院のこれから」ということで、法人として今後目指していくところ、「経営戦略」というテーマで、皆さまからお話をいただきたいと思います。

溝口 大学に高校も含めての戦略ということになりますと、やはり、校祖森わさが打ち立てた「社会に役立つ人材を世に送り出すこと」というのが、その根本になると思います。私どもの法人が使えるお金というのは、ほとんどが学生、生徒の納付金ですから、これはほかのことには使うべきでない。学生、生徒に役立つ形で還元しなければならないと、かねがね考えています。高校にしても大学にしても、ここで提供する教育の内容は、実際に世の中の役に立つ知識と技術の養成に資するものでなければなりません。それと、森わさが高々と掲げた「しっかりとした精神の持ち主を育てる」という理念を実現していくことです。この二点に尽きると考えています。

岡田 私は、高校も含めた法人のこれからということで考えるならば、大きく三つの柱があると考えています。まず一つ目が、中長期計画に基づく法人運営ということですね。これまで大学の運営上の心得としてきた「クリーンでクリアーであれ」という精神を受け継いでいくこと、とりわけ大学についてお話をするならば、現在、有瀬キャンパスとポートアイランドキャンパスに分かれており、学年移転をしている学部がまだ3つございます。2つのキャンパスの、バランスのとれた位置づけというのを考えていく必要があろうと思います。ポートアイランドキャンパスが都市共生型のキャンパスであるのに対して、有瀬キャンパスは、健康で安全な生活の探究を実現するというようなことを目的とするキャンパスです。それぞれのキャンパスの特徴を生かしていくことが必要でしょう。

二つ目に、理事長もいわれましたように、学生、生徒の満足度を高める取り組みです。これまで以上に教育の充実を図っていき、学生、生徒がそれぞれ自分で考えていく力を養成していくことが必要ではないかと考えます。最終的には、神戸学院大学を、あるいは附属高校を卒業するということで、神戸学院という名前、その卒業生であることに自信と誇りを持ちうる人材を育成していきたいということです。大学でいうならば、創立から46年目を迎えているわけですけれど、この間に6万7000人もの卒業生を送り出しております。それぞれがトップとして、また社会の中核として一生懸命頑張ってくれています。彼らの母校に対する思いというものを重く感じており、そういう彼らの期待にそえる大学であり、高校であり、さらには法人でなければなりません。卒業生は宝であると位置付け、彼らの期待や支援を頂戴しながら運営をすすめていく必要があると考えます。

三つ目の柱として「つながり」あるいは「連携」が大きなポイントになると思っています。一つは、大学と附属高校とのつながりの強化です。2001年(平成13年)以来、両者は先駆的な連携活動をして参りましたが、これをより強めることによって、附属高校であることの利点をさらに生かしていければと思います。それと、かつての短期大学の卒業生も数多くいらっしゃるので、学校法人としてはこの100周年を記念して、大学、短大、附属高校の三者でもって同窓会的なもの、オール神戸学院ホームカミングデーというようなものを毎年開催して、神戸学院で育った者同士の連携を深めていければよいのではないかと思います。われわれ教育を行っている者には知的財産がありますし、キャンパスという場もあります。両者をうまく使うことで、そうした連携を支援していくことができるかもしれません。

また、防災・社会貢献ユニットあるいはスポーツマネジメントユニットというような学外との連携を図って非常に活発に活動している教育組織をフル回転させて、地域貢献を継続していけたらと思います。そして、学生のみならず、教員、職員も社会に出ていってさまざまな取り組みを行いたいと思います。

大学有瀬キャンパス
大学有瀬キャンパス
大学長田キャンパス
大学長田キャンパス
大学ポートアイランドキャンパス
大学ポートアイランドキャンパス

高校と大学が連携していける強みを生かして

附属高等学校
附属高等学校

八田 やや抽象的な話になるかもしれませんが、現在の社会の状況は高度成長時代のそれとは随分違ったものになってきているわけですが、それに伴い教育についても、その役割や意義が変容してきているのではないかと思います。教育が社会の中で果たすべき役割が重みを増しているといいますか、こんな時代だからこそ、しっかりとした教育が必要とされるということでしょう。その中で、本法人の場合は高校と大学の2つですけれど、それぞれのレベルの教育機関が完全に区分されているというのではなく、連携協力していけるというのは大きな強みだと思います。きちんとした理念を持って、一貫した教育ができる、現在の日本社会に役立つ人間を育てていくことができるのではないかと考えます。そういう意味で、われわれ自身、素晴らしい職業に就いているという意識を持っています。

かつて、高度成長期には「どこそこの大学に入れば…」といった風潮、受験教育がありました。これも一つの勉強法ではありますけれど、それが最終目的ではないと、社会に役立つ人材を作りあげていくのだということで、法人としてどう教育を組み立てていくかということを、いままで以上に考えていきたいと思います。高校生、中学生がいま、教育に何を求めているのかということを大学に伝えていき、大学の学部編成をさらに魅力あるものにしていただくというような形もできればよいのではないかと思っております。いま、大学は、医療の補佐的な分野が強いほか、防災にも力を入れておられますので、その特徴を踏まえながら大学7学部と連携し、人材育成をしていきたいと考えています。

大学林山キャンパス
大学林山キャンパス

倉田 忘れてならないのが大学の創設者である森茂樹先生が提唱された「真理愛好・個性尊重」の建学の精神と、常に口にされていた「智者は惑わず、仁者は憂えず」という教訓です。これがエネルギーとなって本法人を今日の発展へと導いてくれているものと信じています。そして、その建学の精神と教訓のもとに、先ほどからお話に出ています「社会に役立つ人材の育成」が指標となって根付いているのではと思っています。また、このような人材を育てるための最も主要な時間が大学教育の4年間です。当然のことですが、大学教育の姿勢は社会全般から眺めて、云うは易く、行うには重たいことですが、真面目で誠実でなければなりません。堅実に、誠実に、そして着実に教育を行っている大学は必ず伸びます。年を追うごとに社会の評価がついてきます。だから、これまでにも増して、きわめて真面目なスタッフと学生が集い、着実に歩みを重ねる神戸学院であり続けることが重要であると思っています。

松本 いま、100周年記念式典の際、法人としての中長期計画を発表する予定で、大学では学長を中心に策定作業を進めておりますが、その中で施設の整備という問題が出てきています。高等学校の移転問題というのも以前から引き続いての懸案になっていますし、大学では2つのキャンパスに分かれていることによる運営の難しさということもあります。また、学部学科の改編等も考えられます。それらにどのような優先順位をつけて取り組んでいくかということと、それに向けての財政基盤の確立に努めるべく動いているところです。本学は創立から40数年を経てかなりの発展をしてきましたが、伝統のある有名私大に比べますと財務基盤がまだまだ脆弱なところもあります。将来のさらなる発展のためにそこをしっかりと確立していくことが重要だと考えています。

司会 本日は「法人の歩みを振り返り、今後の経営戦略を語る」というテーマで、語り尽くせない事柄も数多くあると存じますが予定時間が参りました。長時間にわたり懇談していただきありがとうございました。

(2011年11月9日 神戸学院大学有瀬キャンパス4号館・理事長室にて)

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