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  5. 2008年6月 神戸学院大学主催イベント「地球環境防災フォーラム」開催レポート
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シンポジウム(2)

環境問題や防災、そして、地球の未来を考える
「地球環境防災フォーラム」開催

第2部 パネルディスカッション

日  時:
5月17日(土) 14:10〜15:40
場  所:
神戸学院大学ポートアイランドキャンパスB号館
【パネリスト】
野田  彰氏 基調講演 講師
森澤 眞輔氏  (京都大学工学研究科 都市環境工学専攻 環境デザイン工学講座教授)
山田 好一氏  (JICA企画部気候変動室長)
【コーディネーター】
杉木 明子氏  (神戸学院大学 法学部准教授)
パネルディスカッション

シンポジウムの第2部は、第1部で講演を行った野田氏に加え、京都大学工学研究科の森澤眞輔教授とJICA企画部気候変動室長の山田好一氏を迎え、パネルディスカッションが開催されました。最初に、山田氏の方から、地球温暖化に対する日本政府の方策及びJICA(独立行政法人国際協力機構)の気候変動にかかわる取り組みの方向性について述べていただきました。森澤教授には、地球環境の汚染が日本人の健康にどのような影響をもたらすかという問題について語っていただきました。野田氏からは、地球温暖化問題と二酸化炭素などの温室効果ガスとの関連について懐疑的な意見もあることが紹介され、そうした意見に対しては、科学的なデータを根拠にしながら反証していくことの重要性を説いていました。

パネルディスカッションより

京都大学工学研究科 都市環境工学専攻
森澤 眞輔 教授

京都大学工学研究科 都市環境工学専攻 森澤 眞輔 教授

かつて、冷戦時代に、核戦争が勃発すれば地球環境はどう変化し、それによってどのような事態が引き起こされるかという議論が活発に行われました。直接の被爆地では多くの人々が亡くなり、被爆した地域の食物も当然食べることができなくなります。同時に、核爆発によって巻き上げられた粉塵や煙が地球を覆い、太陽光を遮断して地球全体が冷却することによって、世界的規模の食料危機が発生し、社会の混乱が人類の飢餓を拡大するという予測が立てられました。その中で、核戦争が勃発しても例えばアメリカ合衆国では備蓄食料で1年間生き延びることができるという結果が予測されました。翌年からは食糧を生産が可能になると想定すると、戦争当事国であっても大規模な飢餓は起こらないだろうと試算されています。一方日本は、多くの食糧を外国に依存しているため、人口の3分の2は1年間生き延びることが不可能であろうと予測されています。

こうした核戦争ほどの規模でなくても、私たちは、常に地球環境の変化や汚染にさらされています。1960年代に核保有国によって大気圏内での核実験がさかんに行われました。こうした実験によって大気圏内に放出された放射性物質は世界中に散らばり、世界で生産される農作物中に極微量ですが現在も残留しています。また、日本では既に禁止されている、DTTのような極めて毒性が強い農薬を使用している国はまだあり、そうした極微量の有害物質は食糧の輸入に伴って全世界から日本に運ばれているのです。その他、干ばつや穀物からのバイオ燃料生産、投機資金問題による穀物価格の高騰など、地球環境や社会の変化によって、食糧危機に陥り、大規模な飢餓が発生する危険性が常に存在しています。特に私たち日本の社会は食糧危機に極めて脆弱なため、こうした事態に耐えうるシステムを早急に構築する必要があります。私たちの社会の安定や健康は、地球規模の環境のあり方と決して無縁ではないのです。

パネルディスカッションより

JICA企画部気候変動室長
山田 好一 氏

JICA企画調整部気候変動室長 山田 好一 氏

IPCCの報告によると、地球全体の気温上昇による変化として、食糧生産性の低下や生態系の変化による絶滅種の増加、海面上昇、砂漠化、氷河の溶解、台風などの大型化、蚊やハエの増殖による感染症の増大など、さまざまな影響が指摘されています。こうした負の影響を金額で試算すると、世界全体のGDPの5%から20%の損失となり、1930年代の大恐慌と20世紀の2度に渡る世界大戦での損害を併せた規模に相当するという研究結果も報告されています。こうした損害を引き起こす地球温暖化の原因となっている二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量は、アメリカや日本などの先進国と中国・インドといった新興国で全体の3分の2を占めています。発展途上の国にとっては、自国の産業の発展が優先され、環境対策が後回しになっている状況があります。そうした国々にとって、そもそも、今まで温室効果ガスを大量に排出し続けて来たのは先進国であるという不満もあります。日本政府としては、7月に開催される洞爺湖のサミットにおいて、そうしたさまざまな立場に考慮した上で、京都議定書の期限が切れる2013年以降の地球温暖化防止対策の枠組み構築に向け先進国の中でのイニシアチブをとっていきたい考えです。

JICAにおいては、日本政府の方針を踏まえ地球温暖化防止対策のために、発展途上国に対しての技術協力及び資金協力を行い、経済成長を優先させながら環境保全との両立を図るプロセスを実行する必要があります。JICAの事業のうち現在30%は気候変動対策に充当されており、今後、このパーセンテージも上昇していくものと予想されます。10月には、国際協力銀行とJICAの海外協力部門が統合されるため、円借款を導入して直接資金提供を行うことが可能になりました。そのため、風力発電やインドで行われる地下鉄の借款事業など、ODA(政府開発援助)を通じて、気候変動対策に貢献することもできるようになります。JICAは、理事長である緒方貞子も申し上げている通り、「人間の安全保障の実践、社会的弱者を救う」立場で今後も活動を続けてまいります。

正しい知識を得て、
自分でできることからまず実践する

コーディネーター
法学部 杉木 明子 准教授
(学際教育機構 防災・社会貢献ユニット兼担)

法学部 杉木 明子 准教授 (学際教育機構 防災・社会貢献ユニット兼担)

私の専門は、国際政治やアフリカ政冶ですが、地球温暖化問題を直接的に研究しているわけではありません。しかし、近年、自分の研究分野にも間接的にこうした問題が関係している現象が起きています。例えば、調査地の1つ、アフリカのウガンダでは、昨年大洪水に見舞われました。今まで全く起こらなかった時期に発生していて、気候変動が影響しているといわれています。また、ウガンダとケニアの国境地帯であるカラモジャ地域では住民同士の争いが絶えず、治安が悪化しています。この争いの直接的な問題は家畜の襲撃ですが、そもそもそのような争いがおきた背景には、干ばつにより家畜の食料であった牧草が育たず、それにともない家畜が死亡するという問題があります。こうした事例を目の当たりにすると、研究外だから関係ないとは言えなくなってきています。今回、シンポジウムのコーディネーターを務めさせていただいて感じたことは、野田先生などが行っておられるような、緻密な科学的データに基づいた、地球温暖化に関する正しい知識をもっと私たちが知り、そこから行動をする必要があるということです。シンポジウムの中でも、当初の予定を変更して質疑応答に時間を割きました。地球温暖化問題に関しては、テーマがあまりにも広く実感が伴わないため、自分たちの問題として捉えられないという側面があります。自分の力ではどうしようもない、関係ないと思わずに、正しい知識を得た上で日常生活の中からできることからはじめることが必要だと思います。一人一人が問題意識を持って行動し、環境に配慮したライフスタイルが浸透すれば、ひとつの潮流を生み出す事ができると思います。地球温暖化問題とは、私たちの行動次第で、変えることができる未来でもあります。そうした意味で、今回のシンポジウムのような試みが継続的に行われる必要があると考えます。

地球規模の防災・社会貢献を
考える場となったシンポジウム

シンポジウムディレクター
学際教育機構 防災・社会貢献ユニット
金芳 外城雄 教授

学際教育機構 防災・社会貢献ユニット 金芳 外城雄 教授

今回、「地球環境防災フォーラム」の企画運営の中心を担ったのは、本学の防災・社会貢献ユニットです。地球環境問題を防災や社会貢献といった私たちユニットの研究領域とどう結び付けて考えるかということで、「異常気象と災害」というテーマで専門家を招きシンポジウムを行うことになりました。パネリストに関しては、地球規模の気候変動や災害について説得力を持って語れる方ということで、IPCCの第4次報告書の作成の共同執筆者の一人である野田氏、また、地球環境汚染の研究者であり京都大学防災研究所の出身でもある森澤教授、そして、世界規模の災害救援活動を行っているJICAの山田氏という方々をお招きしたわけです。今回のシンポジウムでは、3人の方がそれぞれ、地球温暖化や環境汚染をどう考えていくのか、世界で異常気象による災害が起こったときにはどうすればよいのかといった、今日本が抱えている課題、あるいは日本に求められている役割に対して専門家としての立場から的確な提言をしていただくことができました。異常気象による災害に対する防災や、それに伴う社会貢献も、“命”の重さ、尊さをいかに感じられるかだと思います。自分や家族の命を大切に思う気持ちを、今回サイクロンの被害にあったミャンマーの方々にも感じることができるかどうか。そうした、すべての命を大切に思う気持ち、“恕(じょ)”、つまり、思いやりの心を持つということは災害を生き抜くための基本です。そうした意味でも、今回のシンポジウムは、参加した一般の方や学生たちの意識を高め、狭い範囲での防災や社会貢献ではなく地球自体が抱えている問題として考える場となったのではないでしょうか。7月には、本学と神戸市の主催で「神戸市民夏季防災大学」を、このポートアイランドキャンパスで開講します。これからも、こうした地球環境問題や防災、社会貢献分野で社会に貢献できるような試みを本学から発信していきたいと思います。

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