1. 神戸学院大学
  2. 學報.net
  3. フロントライン
  4. 2008年度
  5. 2008年6月 神戸学院大学主催イベント「地球環境防災フォーラム」開催レポート

2008年6月 神戸学院大学主催イベント「地球環境防災フォーラム」開催レポート

環境問題や防災、そして、地球の未来を考える
「地球環境防災フォーラム」開催

5月10日から5月25日までの間、本学ポートアイランドキャンパス(神戸市中央区)で「地球環境防災フォーラム」が開催されました。このフォーラムは、5月24日から3日間、ポートアイランドで行われた「G8環境大臣会合」開催に合わせ、本学を主催として行われたものです。地球温暖化問題とそれによって引き起こされる災害をいかに防ぐかという課題を共通テーマに、それぞれ異なるアプローチで開催期間中5つのイベントが開催されました。

環境問題や防災、そして、地球の未来を考える 「地球環境防災フォーラム」開催

地球環境防災フォーラムの開催にあたって

神戸学院大学 早木 仁成 副学長
(神戸学院大学地球環境防災フォーラム実行委員会委員長)

神戸学院大学 早木 仁成 副学長 (神戸学院大学地球環境防災フォーラム実行委員会委員長)

このたび、5月24日から26日にかけて、「G8環境大臣会合」がポートアイランドで開催されるにあたり、本学も本会合の趣旨に賛同し、この「地球環境防災フォーラム」を開催することとなりました。これを機に、将来を担う若者たちが中心となって、環境問題についての提案を行うことができればと考えています。私の個人的なお話をさせていただきますと、1980年代から90年代にかけて、アフリカのタンザニアという国で類人猿の研究に携わっていました。タンザニアの類人猿の調査地は森林地帯で、現地の人々はそうした森の中に分散して焼き畑農業をして生計を立てておりました。しかし、国の政策で1カ所に多くの人々が集められたり、内戦によって隣国からの避難民が押し寄せたりしたことで、村の人口が急激に増大し、周辺の森林伐採が急速に進みました。その結果、豊かだった森が荒廃してしまったのです。こうした体験を通じて、人間の営みの変化があっという間に自然を変えてしまうことの恐ろしさを感じました。現在の世界では、地球温暖化の問題が注目を浴びています。私たちは、この問題の根本である人と自然との共生を考える必要があります。「地球環境防災フォーラム」を、地球・環境・防災を軸に、多様な視点で皆さんと一緒に考える機会とし、今後もさまざまな取り組みに活かしていきたいと考えています。

シンポジウム(1)

第1部 講演会
「異常気象と災害  ―気候モデルによる予測結果とそのメカニズム― 」

日  時:
5月17日(土) 13:00〜14:05
場  所:
神戸学院大学ポートアイランドキャンパスB号館
講演者:
野田 彰 氏(独立行政法人海洋研究開発機構
地球環境フロンティアセンター地球環境モデリング
研究プログラムディレクター)

野田氏は、昨年、ゴア元アメリカ副大統領がノーベル平和賞を受賞した際、同時に授賞の対象になった世界気象機構(WMO)と世界環境計画(UNEP)の共同で設立された組織「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第4次報告書の作成にあたって、温暖化予測の章における共同執筆者の一人に名を連ねています。IPCCは、組織が結成された1988年から、地球温暖化に関する世界の最新の学術的研究成果を世界各国の専門家が評価し、報告書にまとめ、国際連合の締約国会議に提供しています。野田氏には、今回の講演会において、21世紀末には現在の気温から1.8〜4度上昇し、また、台風などの発生数自体は減少するが大型化しより強力になるといった、このまま地球温暖化が進行することによって引き起こされるさまざまな気候変化の予測結果と、そのメカニズムについて報告、説明していただきました。

野田 彰 氏(独立行政法人海洋研究開発機構)

「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は、地球温暖化の科学的評価やその評価を受けての温暖化の影響、対策などを考える第一から第三までの作業部会と、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの目録を作成するセクションからなる組織です。IPCCは世界各国の科学者が参加し、地球温暖化に関する科学的根拠に基づいた学術発表を調査して5年から6年おきにその評価結果を発表し、国際政治における政策決定者への判断材料として提供してきました。こうした、過去20年間あまりの功績が認められて、ゴア元アメリカ副大統領と共にIPCCもノーベル平和賞を受賞したのです。

地球に降り注ぐ太陽光は、地表面を温めて赤外線となって熱を放射して、地球のエネルギー収支がバランスしています。地表から放出される赤外線を、大気中に含まれる水蒸気、二酸化炭素、メタン、窒素、フロンなどが吸収し、大気から熱を逃がさないようにしているため、地球上の生物にとって快適な温度まで地上気温が上がり、エネルギー収支が保たれているのです。もし、これらの「温室効果ガス」が大気中に存在しなければ、世界の平均気温は−18℃にまで下がると計算されています。地球温暖化の問題は、「温室効果」のおかげで快適な「温室」が、人為起源の「温室効果ガス」の増加によって、暖まりすぎることにあるのです。このような、温室効果ガスの増大と地球温暖化の関係は、1850年以降2000年までの観測データから、温室効果ガスが増え続けるとともに地球の平均気温が上昇していることが示されていることと矛盾しません。温室効果ガスが急激に増えたこの50年あまりにいたっての地上気温の上昇は特に顕著です。

最新のコンピュータを駆使して予測した結果をまとめたIPCCの報告書によると、こうした地球温暖化によって引き起こされる異常気象等の問題は、地域によってその傾向が異なるとの報告がなされています。その一つとして、現在雨の多い地域はより雨量が増え、乾燥した地域はさらに乾燥地域が拡大することがあげられます。つまり、対流圏では赤道付近で暖まった大気は、水蒸気を大量に含んでいますが、上昇する途中で凝結して雨を降らし、上層で乾燥した大気は、極向きに流れますが、地球が回転している効果(コリオリ力)のために、極まで到達出来ずに中緯度で下降します。これは、中緯度のサハラ砂漠、タクラマカン砂漠、アメリカ西部の砂漠、地中海地方などで雨が少ない理由になっています。そのため、地球温度の上昇によって、全球的に蒸発が盛んになり、赤道のように元々下層で水蒸気が収束する緯度帯では、降水が増加することになりますが、下降気流が卓越する中緯度帯では、多少水蒸気が増えても、温暖化で飽和蒸気圧が増すために、水蒸気が凝結しにくくなり降水が減少してしまいます。全球の降水量は増加しますが、同時に砂漠化も進行することになります。台風やサイクロンなど熱帯低気圧については、温暖化が進むと発生自体は少なくなると予想されています。ただ、熱帯低気圧がいったん発生すると、温暖化によって燃料である水蒸気は増加しているので、大型・強大化し被害を拡大させると考えられています。日本ではどうでしょうか。21世紀末の日本付近では、本州の平野部で最高気温が30℃以上を超える日(真夏日)が現在より30から40日も増加すると予想されています。また、梅雨が長引き強い雨の頻度も増えるなど、蒸し暑くじめじめした季節が長期間続くと予想されています。

地球温暖化によって、今後、私たち人類が経験したことのない規模の自然災害が発生することが懸念されています。IPCCではこれまで、4回の報告を行ってきました。次回、第5次の報告に向けて、私たちは日本の総力を結集し、特に異常気象やそれに伴う災害の予測について力を注いで研究し、信頼度の高い情報を提供していきたいと考えています。

ページトップへ