社会福祉士を目指すための授業フロントライン

事例【3】
間接援助技術向上のために行われた学内タバコポイ捨て調査

間接援助技術向上のために行われた学内タバコポイ捨て調査

総合リハビリテーション学部の社会リハビリテーション学科は、社会福祉士などを養成するための学科です。本学科では、社会福祉士資格取得のための必修科目「社会福祉士援助技術演習Ⅲ・Ⅳ」のなかで「学内のタバコポイ捨てをなくす対策づくり」をテーマに学生たちをグループに分け、最終的にレポートをまとめてもらうという授業が組み込まれています。

間接援助技術向上のために行われた学内タバコポイ捨て調査

社会福祉士の仕事には、大きく分けて2通りあります。1つは、個人の相談と支援を行う、専門用語で「直接援助」とよばれるもの。もう1つは、そもそもそうした個人の悩みや生活しづらさは社会に起因するとして、今の社会をより良くするために地域社会に働きかける「間接援助」とよばれる実践があります。今回の、「学内のタバコポイ捨てをなくす対策づくり」の授業は、後者のスキルを学ぶためのものです。

間接援助技術向上のために行われた学内タバコポイ捨て調査

「間接援助演習」は、全体で週1回2時限を使って実施される計6週間6回の授業です。その内の前半3週間は基礎演習に当てられ、後半3週間が「学内のタバコポイ捨てをなくす対策づくり」に費やされます。この授業の1週間目は、まず、最終的に提出するレポートの完成形や計画の全体像をイメージしたり、“学内が禁煙となった背景と現状の対策”を調べて話し合うといった作業をします。2週目は、1週目に与えられた議題に対する結果をグループ間で共有し、“学内のたばこポイ捨ての状況と、その要因”を探るための調査設計を行います。3週目は、前回の調査を踏まえた上でタバコのポイ捨てを学内からなくす対策を考え提案。1週間後に企画提案書としてレポートを提出します。

総合リハビリテーション学部 社会リハビリテーション学科
藤井 博志 准教授

社会福祉は実践の学問です。実際に今そこにある社会の諸問題を見つけるために、地域を歩いて、観察し、調べる(フィールドワーク)ことで、解決策を模索し提示することが社会福祉の専門家、社会福祉士(ソーシャルワーカー)の重要な仕事です。学生たちは、「学内のタバコポイ捨てをなくす対策づくり」の授業のなかで清掃員の方や学生支援事務室の方、さらには学生にも積極的な聞き取り調査を行い、自分たちなりの解決法をなんとか見つけ出していました。

この授業では、学内という限られた空間ではありますが、学生たち自身が大学という社会の構成員の一人であるという自覚にめざめ真摯に取り組んでくれたこと。そして、自分たち学生以外にさまざまな人たちによって大学という社会が構成され、そうした方々によって自分たちの大学生活が支えられているということに気づいてもらえたこと。それが一番大きな収穫でした。

初めての試みだったこともあり、今回はこちらからテーマを与えての授業となりましたが、次回からは学内にどのような問題があるかを学生たちに考えさせ、課題解決テーマを設定してもらうことから始めたいと考えています。

Voice

「まず、今ある問題に“気づく”ことの重要さを知った貴重な経験」


総合リハビリテーション学部
社会リハビリテーション学科
3年次生
加藤誠さん、千田美咲さん、
藤澤知栄さん、水澤佑介さん
総合リハビリテーション学部 社会リハビリテーション学科 3年生 加藤誠さん、千田美咲さん、藤澤知栄さん、水澤佑介さん

今回の授業では、それぞれの作業は各自が分担して行いました。レポートの作成方法にしても、レポートの項目ごとに担当を決め各自がその項目をまとめていき、最終的にレポートにする時に1つ合わせて完成させました。さらに、各項目の中では、タバコの吸い殻が固まって校舎の隅に落ちている写真など画像を多用したり、タバコのポイ捨てが学内のどの部分に多いかを分類・整理したマップを挿入するなど、文字ばかりにならないよう、ポイ捨ての現状がよく分かるよう各自で工夫しました。

今回の授業を経験して学んだことは、今まで見過ごしていたタバコのポイ捨てが思った以上に多く、実は学内の大きな問題であると思い知らされたことです。そこで、まず自分たち自身が普段の行動に責任を持つことから始めて、次に、ごく身近な友人たちなどから注意を喚起していきたいと思っています。そうすることで、タバコのポイ捨てはしないという意識が周囲に徐々にでも広がって、やがては学内の大きな“社会問題”であるタバコのポイ捨てがなくなる日が来る。そう、願っています。

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