理学療法士養成のための学外連携実習フロントライン

事例【2】
総合リハビリテーション学部の外部提携による実習

総合リハビリテーション学部の外部提携による実習

手足を失うといった体に重大な損失を被った患者に対して、理学療法士としていかに本人の身になってその気持ちを理解し、必要なケアを正しく施すことができるか。総合リハビリテーション学部の医療リハビリテーション学科では、学生にそうした感覚を実地に学ばせるため「装具学実習」と「切断の理学療法実習」を3年次生の前期で実施しています。

総合リハビリテーション学部の外部提携による実習

「装具学実習」では、義肢製作会社に出向き、会社概要や義肢装具製作の流れの説明を受け、下肢装具製作室や体幹装具製作室、義足適合室をそれぞれ見学します。また、学内に義肢製作会社の義肢装具士の方々を招き、社員の方がモデルになって石膏で下肢の型をとる採型デモンストレーションを行い、その手順に従って今度は学生たちが各自で採型を行います。

総合リハビリテーション学部の外部提携による実習

「切断の理学療法実習」では、義足を足に装着する際に切断端部分と義足とをつなぐ義足ソケットの採型実習を実施。自らが義肢装具士でもあり、大腿部と下腿部に障害のある2人にお越しいただき、採型の実習を行いました。最後に行われた臨床講義では、仕事で重機を操作している際に下敷きになって足を切断してしまったという60歳代の太腿切断者の方が来学。ご自身の事故のお話やその後のつらいリハビリ生活を乗り越えて社会復帰したことなどをお話しされ、学生が切断端に包帯を巻く実習のモデルにもなっていただきました。

総合リハビリテーション学部 医療リハビリテーション学科
理学療法学専攻 小嶋 功 講師

この「装具学実習」と「切断の理学療法実習」は、患者中心のリハビリテーションチームで行うアプローチの重要性を学生に真に理解してもらうために実施しています。装具の採型実習や義肢製作会社への見学、作業療法学専攻で補装具をご専門とする古川、中川教授、細谷准教授の講義も取り入れ、実際の理学療法士が行う実務の範囲を超えた内容を実習に盛り込みました。

この試みは今年度からスタートしたのですが、学生にとっては、理学療法士の仕事への理解が深まったということ、企業にとっては学生に教えることで社員教育の場としても有意義であったということでした。今回参加していただいた患者の方も、こうした機会があればぜひ協力させてほしいとおっしゃっています。

今後も、理学療法士の知識だけにとどまらず、患者ひとり一人に細やかに対応できる「オーダーメイド医療」に対応できる人材を育成するため、学科の領域を超えて協力し合い、本学部の冠である“総合”の強みを生かした授業を実施していきたいと思っています。

Voice

「将来、患者の日常や精神的な部分を含めた“リハビリ”を施したい」


総合リハビリテーション学部
医療リハビリテーション学科
3年次生 林 真太郎さん
総合リハビリテーション学部 医療リハビリテーション学科 3年生 林真太郎さん

「装具学実習」と「切断の理学療法実習」の授業のなかでさまざまな経験をしましたが、実際に太腿切断者の方にお会いして切断面に包帯を巻かせてもらったり、ご自身の体験を話していただいたことが一番印象に残っています。

この方は、事故にあって10年も経過するのに、今は存在しない切断された足が痛むような感覚(これを「幻肢痛」といいます)をいまだに感じるというお話や、日常生活において、健常者だと感じないようなわずかな段差でも歩くのがつらいというお話など、実際にお会いしないと分からない切断者の方の日常を知ることができました。

同時に、普通に日常生活を送ることがいかに大変かということも痛感しました。この貴重な経験を踏まえて、体だけでなく心のケアも同時に行えるような理学療法士を目指したいと、改めて思いました。

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