神戸学院大学

「震災ボランティアのこころの傷-予防と対応-」が開かれました

― 有瀬キャンパス マナビーホール ―
開催日: 2011年7月30日(土)

話に聞き入る参加者
話に聞き入る参加者

心理学を生かした地域ボランティア養成講座Ⅰ「震災ボランティアのこころの傷-予防と対応-」が7月30日、有瀬キャンパスのマナビーホールで開かれ、約190人が参加しました。本学地域研究センターと心理臨床カウンセリングセンターの共催。震災ボランティアを経験した後、身体的、心理的に不調をきたした学生の訴えをきっかけに、一般には知られていない、ボランティア自身が受けるこころの傷を取り上げました。

震災ボランティアに対する心理的ケアの実際

震災ボランティアの実情を説明する前林教授(左)と川口コーディネーター
震災ボランティアの実情を説明する
前林教授(左)と川口コーディネーター

本学は、阪神・淡路大震災の震源地に最も近い大学として、東日本大震災の発生直後からボランティアバスを被災地に派遣するなどの活動を行っています。

はじめに学際教育機構防災・社会貢献ユニット長の前林清和教授が、ボランティアバスを派遣する際は事前・事後の研修を行い、心理的なケアを行っていることを紹介しました。事前研修は、被災者のこころの傷を広げることなく、ボランティア自身のこころも守る話の聴き方を具体的に指導。しかし、ボランティアの終了後に約半数の学生が心理的な苦痛などを訴え、話を共有する人がいない孤独感や、日常生活に戻りづらくなるという問題点を指摘しました。

ボランティア活動支援室の川口謙造さんは、被災地での活動、ボランティア後の学生の感想を紹介。学生は、すべてを流された被災地で、喪失感や被災者から身近な人を亡くした話を聞かされた時の無力感を体験しており、ボランティアを行うことによって「ショックや無力感、疲れ」などを感じる可能性があり、こころのケアが必要であることを強調しました。

震災ボランティアの受けるこころの傷と、心理臨床的アプローチの提案

人文学部の石﨑淳一教授は、心理臨床の立場から話をしました。「ボランティアの受けるこころの傷は、時間とともに癒されるが、中には無意識に身体に封印、保存されてしまうものもあります」といい、その場合、後の何らかの機会に、傷に伴う感情が出てくることがあると説明。それに対しては、ボランティア活動を終えた後の心理療法的アプローチとして、自助的なグループワークや、心身の簡単なリラクゼーションのような非言語的な表現手段の活用を提案しました。

人文学部三和千德准教授は、ボランティアの心の傷の中でも特に重篤な外傷後ストレス障害(PTSD)について説明。フォーラム直前まで被災地でボランティア活動をしていた経験を踏まえ、活動を終了したボランティアが仲間に温かく受け入れられる必要があること、精神医学的な問題が生じたメンバーは受診も考慮に入れることを提案しました。

ディスカッション

心理臨床カウンセリングセンターの日髙正宏センター長を座長とし、ディスカッションを行いました。被災地の心理状態が、災害の復旧に立ち向かおうとするハネムーン期から、復興格差が拡大し無力感や絶望感に苛まれる幻滅期へと移り変わる中、ボランティア個人への働きかけとともに、組織的な関わりの重要性を確認しました。

ディスカッションする、左から日髙座長、石﨑教授、三和准教授
ディスカッションする、
左から日髙座長、石﨑教授、三和准教授
会場では震災ボランティアのパネル展示も行われました
会場では震災ボランティアの
パネル展示も行われました

学生の感想

個人でボランティアに行く人たちは、ほとんど事前研修や事後研修をしていません。セルフマネジメントやストレス反応、話の聴き方などを知った上で現地へ行くのと、それらを知らずに行くのでは全く違うことを知りました。震災ボランティアの心の傷を最小限に抑えるために、事前研修、事後研修が大切だと改めて感じました。次の活動に、生かしていきたいと思います。

【修士課程2年次生】

さまざまな立場からの話をお聞きし、とても良いフォーラムでした。実際にボランティアに参加した学生たちのリアルな話を踏まえて、臨床心理士と精神科医のお話を聞き、2次受傷は誰でも起こりうることだと感じました。きっとボランティアに参加された方には、“これくらいで落ち込んでいたら東北の方に失礼だ”というような気持ちもあるのではないかと思いました。今回のフォーラムで、誰にも相談できずにつらい思いをしている気持ちが少しでも楽になればいいと思いました。また、これから被災地へボランティアに行くにあたっての心構えができたように思いました。

【修士課程2年次生】

フォーラム開始時に受付を担当しましたが、用意したパンフレットが足りないほどの多数の人が来てくれたため、慌ててしまいました。分担して配っても手が回らないほど、多くの方々が来てくださった印象がありました。次回への反省点などはありますが、とても充実したフォーラムになったと思います。

【修士課程1年次生】

今回のフォーラムで、ボランティアというものの難しさを改めて感じました。ボランティアに行く心構えや、素人ボランティアの問題などが震災時に多く取り上げられたと思いますが、ストレス時のサイクル知識なども含め、事前指導がいかに大切かを感じました。注意点や被災者への気遣いでボランティアに多くの負担がかかる部分もあるように感じますが、事後指導があると聞き、ボランティアの働きも認めるということの重要さを実感させられました。

【修士課程1年次生】

被災地でのボランティアの様子や学生たちの感想を聞いて、ボランティア前後の指導やケアがとても大切だと分かりました。子どもたちの攻撃的な様子などで心理的な負担を負わないためにも、事前に話の聞き方などを聞いておかないといけないと思いました。ボランティアは1回きりだったり、短期間であるため、現地の方との関係づくりは難しく、継続してボランティアを送ることが大切だと感じました。心のケアというテーマはこれからもっと重要になると思いました。

【修士課程1年次生】

実際に現地に行った人の感想やアンケート結果を見て、自分たちはまだまだ現実を知らないことを思い知らされました。特に心に残ったのは、子どもたちと接した学生さんの感想や震災に遭った子どもたちのことでした。なかなか復興が進まない状況の中で、子どもたちが震災に遭う前の生活と現在の生活の差に苦しむ様子が「死神が来た」という言葉に出てきていて、言われた学生はきっと苦しい思いを抱きながらも、何も言えなかったのではないかと思いました。子どもと遊ぶ中でも、暴力的な態度を取っている子どもがいるなど、メディアでは知らされていないことがたくさんありました。そんな中、すぐに行動を取ったボランティアの方には本当に頭が下がります。ただ、一緒に体を動かして遊ぶ場面はニュースでも見ていて、身体を動かすことで心も元気になっていくのではないか、そのことを通してストレスも少しずつ解消されていくのではないかと思いました。

子どもが苦しんでいる中で弱音を吐けないと、ストレスを抱えて苦しんで過ごす大人がたくさんいることを改めて思い知らされました。ある被災者の方が「話を聞いてくれてありがとう」とおっしゃったという感想のところで、そういう時こそ、私たちのように元気な大人が話を聞いてあげるだけでも、その人の心は少しずつ救われていくのかなと考えると、普段の生活でも非常時でも根本は変わらないのかもしれないと感じました。

【修士課程1年次生】

二次受傷について話が聞け、大変勉強になりました。私は、ボランティアの事前講習で二次受傷を話してはどうかと思いました。支援者も被災者と同じストレス反応を呈し、PTSDになりうるのだということを学んでおく必要があると思います。トラウマを負った人々に関わることには、リスクが存在するということを理解し、そのことが支援者のケアに繋がるのだと思いました。また、支援後の事後実習として、ディブリーフィングが有効なのではないかと考えます。ディブリーフィングの悪影響も言われていますが、効果的な利用方法について、今後は研究していきたいと考えています。

【修士課程1年次生】

私は阪神・淡路大震災を経験しており、東北の地震で被災された方のつらさや大変さに共感していました。しかし、今回のフォーラムで、被災された方だけでなく、被災地にボランティアで行った方もつらさや大変さがあるのだと分かりました。同時に、何もしていない自分が腹立たしく感じました。

【修士課程2年次生】

復興の進み具合や被災者の心の状態がさまざまで、おおまかなニーズですら把握することが困難な状況であることが分かりました。それだけに、ボランティアとして現地に向かう場合も対応の難しさが今までよりも困難になることが予測されます。そうした中、私たち一人ひとりが何をすべきなのかを考えさせられるフォーラムでした。

【修士課程2年次生】